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メキシコ・カナダ首脳会談、トランプ関税とUSMCAが焦点

メキシコとカナダの関係は経済、外交、文化の各分野で多岐にわたり、特にNAFTAやUSMCAを通じて経済的な結びつきが強化されてきた。
2025年9月18日/メキシコ、首都メキシコシティ、シェインバウム大統領(右)とカナダのカーニー首相(AP通信)

カナダのカーニー(Mark Carney)首相が18日、訪問先のメキシコシティでシェインバウム(Claudia Sheinbaum)大統領と会談した。

会談の焦点は米国・メキシコ・カナダ貿易協定(USMCA)の更新である。

USMCAは定期的に3カ国で見直しを行うことを義務付けている。

協定の見直しは2026年初頭に予定されているが、メキシコ当局は今年中に協議が開始され、見直しによってメキシコと米国の貿易関係に関する不確実性が解消されることに期待を表明している。

カナダの輸出品の75%超、メキシコの80%超が米国向けである。

両首脳は握手を交わし、メキシコシティの大統領官邸に並んで足を踏み入れた。

現地メディアはトランプ関税とUSMCAの見直しが最大の焦点と報じている。

カナダのボーム(Peter Boehm)上院議員はAP通信の取材に対し、「両首脳は米国への対応について意見を交わすことになるだろう」と語った。「米国からどんな話を聞いているのか、どう対応するかなど、今後の米国政府への対応について話し合う場になる...」

シェインバウム氏は18日朝の定例会見で、「自由貿易協定を通じてさまざまな分野での二国間貿易を拡大し、海上ルートを利用することで、米国を経由せずにカナダと取り引きすることも念頭に置いている」と語った。

またシェインバウム氏は「この構想は、カナダとメキシコの港湾を通じて貿易を強化するというものだ」と述べた。

メキシコとカナダの関係は地理的には北アメリカ大陸の隣接した二国であるが、その歴史的、経済的、政治的な背景や文化的な違いにも関わらず、非常に密接で多層的なものとなっている。両国はそれぞれ独自の歴史と社会構造を有しながらも、共通の利益を追求するために協力関係を築いてきた。この協力は、特に経済的な分野で顕著であり、国際的な問題に対する共同のアプローチも存在する。

1. 歴史的背景

メキシコとカナダの歴史的な関係は、直接的な接触が少なかったことから、他の北米諸国との関係に比べると、比較的最近になって強化されてきた。カナダは18世紀にフランスやイギリスの植民地として発展し、その後独立を果たした。一方、メキシコはスペインからの独立を宣言した後、内部的な混乱と紛争を経て、19世紀後半に国としての基盤を固めた。

両国は19世紀後半から20世紀初頭にかけて、米国との関係を重視し、時にはその影響を受ける形で発展していった。例えば、メキシコは米国との国境を共有しており、カナダは英連邦の一員として、主にイギリスとの関係を強化していた。そのため、メキシコとカナダは、直接的な外交関係を持つことは少なかったが、北米における安定と繁栄を共有するという意味では共通の利益があった。

2. 経済的なつながり

メキシコとカナダの経済関係は、主に1994年の北米自由貿易協定(NAFTA)に基づいて深まった。NAFTAは米国、カナダ、メキシコの3カ国が締結した貿易協定であり、これにより、メキシコとカナダの経済的な関係は急速に発展した。具体的には、関税の引き下げや貿易の自由化が進み、三国間の貿易量が飛躍的に増加した。

NAFTA発効当初、カナダとメキシコの貿易関係は比較的限定的であったが、経済のグローバル化とともに、両国間の貿易が活発化した。メキシコにとって、カナダは重要な貿易相手国の一つとなり、特に鉱物資源や農産物、製造業の製品などがカナダに輸出された。また、カナダはメキシコへの投資を拡大し、カナダ企業のメキシコへの進出が進んだ。

3. NAFTAとUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)

NAFTAは両国間の経済的協力を促進し、カナダとメキシコの貿易関係を深化させたが、2017年に米国が再交渉を提案し、NAFTAは2018年に米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)として改訂された。この新しい協定は、関税や貿易障壁を一層低減させ、デジタル貿易や知的財産権の保護など現代的な要素も取り入れた。

USMCAはメキシコ、カナダ、米国の経済関係をさらに強化し、特に製造業や農産物の貿易で重要な役割を果たすことが期待されている。カナダとメキシコは協定の成立に向けて数回の交渉を行い、互いに貿易の自由化と保護を強化するために協力した。

4. 政治的・外交的関係

政治的には、メキシコとカナダは、国際的な課題について共通の立場を取ることが多い。両国は国連や世界貿易機関(WTO)、北大西洋条約機構(NATO)などの国際組織においても協力関係を築いており、特に人権、環境問題、平和維持などの分野で共通の価値観を持つ。

メキシコとカナダは米国と直接的に外交関係を結んでいるが、そのアプローチにおいても多少異なる立場を取ることがある。例えば、メキシコは移民問題や貿易において米国との対立を抱えていることがあり、カナダは比較的温和な立場を取ることが多い。とはいえ、両国は互いに外交的な協力を強化しており、特に北米の地域安全保障や経済問題において共通の利害を共有している。

5. 文化的交流と人々のつながり

文化的なつながりにおいては、メキシコとカナダは異なる文化的背景を持つが、それでも多くの相互理解と交流が進んでいる。カナダにはメキシコからの移民が一定数存在し、メキシコの文化や食文化がカナダ社会に広まりつつある。また、カナダの映画や音楽、アートがメキシコでも人気があり、両国の文化交流は増加している。

両国間では、観光業も活発である。カナダの観光客はメキシコのビーチリゾートや歴史的な都市を訪れることが多く、逆にメキシコからもカナダに訪れる観光客が増加している。特に、カナダ人の高齢者がメキシコに移住するケースが多く、これは両国間の人的交流を一層深めている。

6. 環境問題と協力

環境問題についても、両国は積極的に協力している。米国を含めた北米三国は気候変動、汚染対策、生物多様性保護などの分野で協力している。カナダとメキシコは再生可能エネルギーの普及や温室効果ガスの削減に向けた政策を共有しており、共通の課題として環境問題に取り組んでいる。

7. 課題と今後の展望

メキシコとカナダの関係には、今後解決すべき課題もいくつか存在する。まず、貿易や移民に関する政策の調整が必要であり、特にメキシコは米国との関係が複雑なため、その影響を受けることがある。また、両国間での経済格差や社会的不平等も今後の関係に影響を与える可能性がある。

さらに、環境問題への対応が今後の重要なテーマとなる。気候変動に対する対策は、両国にとって共通の課題であり、より強固な協力関係が求められる。

8. 結論

メキシコとカナダの関係は経済、外交、文化の各分野で多岐にわたり、特にNAFTAやUSMCAを通じて経済的な結びつきが強化されてきた。両国は異なる社会制度や歴史的背景を持ちながらも、共通の利益を追求し、協力し合うことで、北米全体の安定と繁栄に貢献している。今後も経済、外交、環境問題において互いに協力し、より強固な関係を築いていくことが期待される。

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