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米カリフォルニア州消防当局、集合住宅における「単一階段」の危険性を報告

この報告書は、住宅開発の費用を抑えるという目的から提案されている「単一階段」構造への規制緩和について慎重または否定的な見解を示したものである。
集合住宅の階段(Getty Images)

カリフォルニア州の消防当局は今週、3階以上の中高層集合住宅における「単一階段」での避難の是非を検討した報告書を公表した。報告書は州議会が3年以上前の2023年秋に要求した調査に基づくもので、現在の法定提出期限(2026年1月1日)から2カ月遅れの3月2日に提出された。

この報告書は、住宅開発の費用を抑えるという目的から提案されている「単一階段」構造への規制緩和について慎重または否定的な見解を示したものである。提案の背景には、欧州やその他地域では単一の避難階段を持つ中層住宅が一般的であり、2本の階段を設ける現在の建築基準が建築コストを押し上げているという指摘がある。しかし、カリフォルニア州消防長官事務所がまとめた報告は、追加の安全対策を講じても、2本の独立した階段を設けることの安全性を完全には代替できないと結論づけた。

報告書は最新の自動スプリンクラーシステムや煙感知器、高度な換気装置などの安全設備が単一階段でのリスクを軽減する可能性があるとしているものの、避難路が1本しかないことが持つ潜在的な危険性を強調している。特に火災や構造的な不具合が発生した際、複数の避難路がないと、住民や救助隊が安全に避難・救助できなくなる可能性が高いというのが当局の見解である。

具体的な内容として、報告は以下の点を指摘している。単一階段による避難は、非常時に階段が煙や火災で使用不能になった場合、代替経路がなくなり住民の安全が著しく損なわれる恐れがあること、また消防士や救助隊が同じ階段を使用しながら救助活動を行う場合、避難する住民と道が競合する危険が生じること、そして階段内に救助用機材が通る余地がなくなる可能性があることなどだ。

ただし報告は完全に「単一階段」を否定しているわけではなく、建物高さや規模によっては限定的に容認する余地があるとの見解も示している。具体的には、設計や安全装置の条件を厳格に満たす場合、最大4階までの建物については単一階段を認める可能性を示唆している。これを超える階数については厳しい基準が求められるという。

この報告書は最終的な法改正案ではなく、州建築基準委員会や州議会への助言的な文書である。現在の法制度では、州議会は一定期間(5年間)建築基準の大幅な改定を凍結しているため、今回の報告は今後の議論の基礎資料として役割を果たす見込みだ。

住宅政策を巡る論争は続いており、単一階段による建物が今後どの程度容認されるか、また安全性と住宅供給のバランスをどのように取るかが焦点となっている。消防当局の慎重な立場表明は、安全性重視の立場を反映しているが、今後の法整備プロセスや業界・議会の対応が注目される。

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