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米国の新車平均価格5万ドルに迫る「手の届かない存在」


新車価格の高騰は単なる一時的現象ではなく、産業構造や消費動向の変化を背景とした長期的な問題である。
米マツダの販売店(Getty Images/AFP通信)

米国で新車価格の高騰が続き、平均価格が5万ドル(約790万円)に迫る中、消費者の負担増と購買意欲の低下が大きな課題となっている。かつて「手の届く夢」とされた自動車購入は、いまや多くの人にとって現実的な選択肢とは言い難くなりつつある。

報道によると、新車の平均価格は過去6年間で約30%上昇し、直近では約5万ドルに達した。加えて、平均的な月々の支払額も775ドル(約12.3万円)に上昇しており、家計への圧力が強まっている。物価全体の上昇も重なり、消費者は住宅費や食費など生活コスト全般の高騰に直面、自動車購入の優先度は相対的に低下している。

価格上昇の背景には複数の要因がある。第一に、自動車メーカーが利益率の高いSUVや大型トラックに注力し、比較的安価な小型セダンの生産を縮小している点が挙げられる。第二に、安全装備や先進技術の標準化が進み、車両1台あたりのコストが上昇していることも影響している。さらに、コロナ禍に伴う供給網の混乱や生産減少が価格を押し上げ、その影響が現在も尾を引いている。

こうした状況の中、消費者は様々な対応を迫られている。ローン期間を延ばして月々の支払いを抑える動きが広がり、7年ローンの利用割合が増加している。ただし、長期ローンは総支払額の増加を招くため、将来的な負担はむしろ重くなる。また、新車購入を断念し、中古車市場に流れる消費者も多いが、中古車価格も上昇しており、必ずしも十分な代替策とはなっていない。

加えて、低価格帯の車種が減少していることも問題を深刻化させている。3万ドル未満の新車の割合は5年前の約40%から現在は13%程度にまで縮小した。これにより、所得が比較的低い層の新車購入は難しくなり、年収10万ドル未満の購入者の割合も減少している。

自動車価格の上昇は政治的にも無視できない影響を及ぼしている。生活費の高騰に対する不満は有権者の関心を集め、秋に中間選挙を控える中で経済政策への評価にも直結する可能性がある。特にガソリン価格の上昇も重なり、自動車関連の負担増は家計全体の圧迫要因となっている。

一部の自動車メーカーは価格帯の低いモデルの投入を検討するなど対応を進めているが、抜本的な改善には至っていない。結果として、多くの消費者は車の買い替えを先送りし、保有期間を延ばす傾向が強まっている。

新車価格の高騰は単なる一時的現象ではなく、産業構造や消費動向の変化を背景とした長期的な問題である。自動車が生活必需品である米国社会において、この「手の届かない存在」化が今後どのような影響を及ぼすのか、引き続き注視が必要である。

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