◎バイデン政権は今週、不法入国者の急増に対処する新たな規則を発表した。
2023年1月8日/米テキサス州エルパソ、国境の壁を視察するバイデン大統領(Andrew Harnik/AP通信)

米国のバイデン(Joe Biden)大統領は8日、南部テキサス州エルパソを訪問し、メキシコ国境を視察した。バイデン氏が国境の壁を訪れたのは就任以来初めて。

バイデン政権は今週、不法入国者の急増に対処する新たな規則を発表した。

バイデン氏はこの2年、移民問題に頭を悩ませてきた。共和党議員がバイデン政権の政策を甘すぎると批判する一方、人権団体は新たな規則に怒りを表明している。

バイデン氏は10日にメキシコのオブラドール(Andres Manuel Lopez Obrador)大統領と会談し、11日には首都メキシコシティでカナダのトルドー(Justin Trudeau)首相を交えて3者会談を行う予定だ。

バイデン氏はエルパソで記者団の取材に応じ、「亡命希望者たちは多くの資源を必要としている」と語った。

バイデン氏は国境の壁近くで警備隊と話し、南部の国境が置かれている窮状について説明を受けた。

国境警備隊は麻薬や金品などの密輸品を捜索する模擬訓練をバイデン氏の前で実演した。

一方、テキサス州の共和党員アボット(Greg Abbott)知事はバイデン氏の出迎えた際、「国境の混乱の責任は連邦法を適切に執行しないホワイトハウスにある」と書かれた書簡を手渡した。

アボット氏は記者団に対し、「バイデン氏はテキサスの現状を理解していない」と語った。

バイデン政権は先週、不法入国を劇的に減らすと予想される新しい規則を発表した。

この規則はキューバ、ハイチ、ニカラグア、ベネズエラの亡命希望者を毎月3万人受け入れ、2年間の労働許可を与えるとしているが、許可を得るためには身元確認を含む「正規の入国手続き」をクリアしなければならない。

最高裁は先月末、コロナウイルスの世界的な大流行を受けトランプ政権が施行した移民抑制政策「タイトル42」の延長を支持した。

タイトル42は米国内で拘束された不法入国者を入国前の国(主にメキシコ)に戻し、法に基づいた亡命申請の機会を与えるとしている。

バイデン氏が発表した新たな規則はタイトル42を強化するものであり、米当局は不法入国したキューバ、ハイチ、ニカラグア、ベネズエラの市民をメキシコに移送し、法に基づいた亡命申請の機会を与える。

メキシコは米国で拘束された4カ国の市民を毎月最大3万人受け入れることに同意した。

人権団体はこの規則が「亡命を求めて不法入国する以外に選択肢のない個人」を追い詰めると非難している。

米国自由人権協会(ACLU)などは今週、「バイデン政権は国境を越えた個人に与えられる亡命を求める権利とそれを保障する合衆国憲法を公然と否定している」と批判した。

入国した移民を押し戻す通称「プッシュバック法」は国際法に違反しているとして、米国だけでなくEUでも論争の的になっている。

国土安全保障省のマヨルカス(Alejandro Mayorkas)長官は8日、「バイデン政権は安全で秩序ある亡命を奨励し、密輸組織を阻止する努力を加速させる」と記者団に語った。

またマヨルカス氏は新しい規則について、「亡命を禁じるのではなく、人身売買が生み出すトラウマから移民や難民を守るためのものだ」と説明した。

バイデン氏とオブラドール氏の首脳会談ではフェンタニルやその他の違法薬物の密輸が主要議題のひとつになるとみられる。

国家安全保障会議(NSC)のカービー(John Kirby)報道官は7日、バイデン政権は同盟国と共に違法薬物を押収する取り組みを推進していると述べた。

メキシコ政府は長い間、麻薬カルテルの暴力に悩まされており、2006年に軍隊を動員して以来、35万~40万人が麻薬関連の抗争や事件で死亡したと推定されている。

オブラドール氏は就任時、より包括的な方法でこの問題を解決すると表明していた。

メキシコ当局は今週、米国で終身刑に服している悪名高い麻薬王「エル・チャポ」ことグスマン(Joaquin Guzman)受刑者の息子オビディオ・グスマン(Ovidio Guzman)容疑者を逮捕した。

11日には米国・メキシコ・カナダの首脳による3カ国首脳会談が開催され、経済関係の強化に向けた新たな取り組みが発表されると見込まれている。

オブラドール氏は資金難に陥っている国営エネルギー会社に市場を独占させたいと考えているが、米国とカナダはUSMCA(米・メキシコ・カナダ協定)に違反していると非難している。

2023年1月8日/米テキサス州エルパソのメキシコ国境近く、バイデン大統領(Andrew Harnik/AP通信)
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