◎多くの投資家が「イギリス経済は減税しただけで右肩上がりになるほど強くない」と考えている。
米国のバイデン(Joe Biden)大統領は15日、トラス(Liz Truss)英首相の経済政策は間違いと指摘した。
オレゴン州のアイスクリーム店で記者団の取材に応じたバイデン氏は、「混乱は予測可能だった」と語った。
トラス氏は年間所得が15万ポンドを超える市民の所得税45%を見直したいと考えていた。しかし、政府が減税を含む450億ポンド(約7兆3700億円)の景気刺激策の費用を国債でまかなうと発表すると、ポンドはドルに対して過去最低水準まで急落。トラス氏は方針の見直しを余儀なくされた。
多くの投資家が「イギリス経済は減税しただけで右肩上がりになるほど強くない」と考え、ポンド売りに走ったのである。
アイスクリームを食べながら記者団の取材に応じたバイデン氏は記者から、「トラス氏が手を引かざるを得なかった問題についてどう思うか?」と尋ねられ、「まあ、予測できることだ。間違いだと思ったのは私だけではないだろう」と答えた。
またバイデン氏は、「私は超富裕層への減税に反対だが、それをするか否かは私ではなくイギリスが決めることだ」と語った。
バイデン氏は以前から、トランプ(Donald Trump)前大統領などが奨励する「法人税を引き下げ、企業活動と投資を促す」というトリクルダウン理論に批判的な考えを示していた。
トリクルダウン理論は「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が行き渡り、経済全体が良くなる」という経済理論である。
しかし、バイデン氏が最重要同盟国のひとつであるイギリスを公に批判するのは異例である。
トラス氏の政策に困惑した政治家はバイデン氏だけではない。
トラス氏率いる与党保守党の議員も不満を表明し、辞任を求める声も上がっている。
一部の首脳は公の場でトラス氏の政策を馬鹿にした。
ギリシャのミツォタキス(Kyriakos Mitsotakis)首相はタイムズ紙のインタビューで国際通貨基金(IMF)がイギリス経済に懸念を示したことについて、「IMFとの付き合い方で分からないことがあれば、我々が助けるよ!」と冗談を言った。
ギリシャはIMFなどの支援を受け、2009年の財政危機を何とか乗り切っている。
在英・ドイツ大使はトラス氏の経済政策に深刻な懸念を表明した。
BBCニュースはある外交官の話を引用し、「われわれは笑いものだ。イギリスは大丈夫ですか?と多くの人が聞いてくる」と報じている。「本当に大変です。私が本質的な話をしようとすると、彼らは事態が落ち着くまで待ちましょう、と慰めるのです...」
ある国の外交官はイギリスが世界を席巻した時代を懐かしみ、「昔のイギリスは...」とSNSに投稿している。
イギリスは正当な手続きと法の支配に従う国であり、どんな問題でも「賢明な側」に立つ傾向があると見られていた。
ある欧州の外相はSNSにこう投稿している。「イギリスよ、目を覚ませ。世界は燃えている。我々はあなたが必要だ」
イギリスの野党議員はトラス氏に引退を勧告し、「イギリスは世界の笑いものになった」と批判している。「お願いだから、できないことはできないとハッキリ言ってください!」
クワーテング(Kwasi Kwarteng)財務相は混乱の責任を取らされ、就任からわずか6週間でクビを切られた。