◎東南アジア諸国は米国と「中国の懸案事項」を共有している。
米国のジョー・バイデン(Joe Biden)大統領は12日、ASEAN(東南アジア諸国連合)のインフラ、セキュリティ、コロナ対策などの取り組みに1億5000万ドル(約200億円)を拠出すると表明した。
ミャンマーを除くASEAN首脳はホワイトハウスでインド太平洋地域の安全保障などについて協議する予定。期間は13日まで。
ASEAN首脳がグループでホワイトハウスを訪問するのは初めて。米主催のASEANサミットは2016年以来。フィリピンのドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領は外相を派遣し、軍の支配下に置かれているミャンマーは参加しない。
バイデン大統領はASEANとの関係を強化することで中国に圧力をかけ、インド太平洋地域の民主主義と安全保障を強固なものにしたいと考えている。
中国は昨年11月、ミャンマーを除くASEAN加盟国にコロナ対策と経済支援として3年総額15億ドルの融資を提供すると約束した。
ホワイトハウス高官は記者団に対し、「米国はASEANに選択(中国か米国か)を迫っているわけではない」と述べる一方、米国はASEANとのより強い関係を求めているとした。
米国はこの地域の電力網における二酸化炭素排出量を削減する取り組みに4000万ドル、海上安全保障に6000万ドル、コロナや将来のパンデミックへの対応に1500万ドルを拠出するとした。残りはデジタル経済や人工知能の法的枠組みの整備などに充てられる。
また、米沿岸警備隊は南シナ海などにおける中国の違法な漁業活動に対処するため、ASEANの漁業者を支援する予定。
バイデン大統領は政策の柱のひとつである世界規模のインフラ投資(Build Back Better World)やインド太平洋経済枠組み(IPEF)などに取り組んでいるが、いずれも最終決定には至っていない。
東南アジア諸国は米国と「中国の懸案事項」を共有している。
中国は世界で最も重要な航路のひとつである南シナ海の90%以上の領有権を主張しており、ベトナムやフィリピンなどとの緊張を高めている。
しかし、この地域の指導者たちはドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領が2017年にTPP(環太平洋パートナーシップ)から撤退して以来、米国の関与が薄れていることに不満を募らせている。
マレーシアのヤーコブ(Ismail Sabri Yaakob)首相は12日、「米国はASEANとの貿易・投資をより積極的に採用すべきであり、それは経済的にも戦略的にも米国に利益をもたらす」と述べた。
IPEFはバイデン大統領の日韓訪問に合わせて発足する予定だが、この構想は米国内の雇用に関する懸念から、アジアが求める市場アクセスの拡大には今のところ至っていない。
一部のアナリストは、「ASEAN諸国は中国に対する米国の懸念を共有しているとはいえ、中国との経済的なつながりを無視することはできず、米国の経済的インセンティブが限られていることから、米国に完全に味方することはない」と指摘している。