◎バイデン大統領はオイルサンド原油の燃焼が気候変動を悪化させると懸念を表明し、1月20日の大統領令で国境通過許可を取り消していた。
6月9日、ジョー・バイデン大統領はカナダとアメリカを結ぶキーストーンXLパイプラインの建設許可を正式に取り消した。カナダ当局は温暖化対策に力を入れるバイデン政権との協議を継続してきたが、ドナルド・トランプ前大統領が推進したパイプライン計画は雲散霧消した。
カルガリーに本拠を置くTCエネジーは声明で、「カナダ西部のオイルサンドフィールドから米ネブラスカ州スティールシティに部分的に建設されたパイプラインを安全に撤去し、政府と協力して工事の終了に向けた作業を進める」と述べた。
キーストーンXLの全長は約2,750km。1日あたりの輸送量は約800,000バレル。カナダのアルバータ州から米モンタナ州、サウスダコタ州、ネブラスカ州、カンザス州、オクラホマ州を経由して南部テキサス州までアルバータ州のオイルサンドから抽出された原油、砂、水、粘土およびビチューメンと呼ばれる混合物を輸送する予定だった。
この計画は2008年に提案され、経済発展と気候変動の対立を象徴する存在になった。バラク・オバマ元大統領は建設を許可しなかったが、トランプ前大統領はこの計画を強く後押しし、工事はスタートした。総工事費は推定90億ドル(約1兆円)と伝えられており、ジャスティン・トルドー首相も大規模工事がもたらす経済へのプラス効果に期待を寄せていた。
バイデン大統領はオイルサンド原油の燃焼が気候変動を悪化させると懸念を表明し、1月20日の大統領令で国境通過許可を取り消していた。
アルバータ州の政府当局者は先日、「トルドー首相はバイデン大統領にパイプライン計画の見直しを強く求めていない」と不満を表明していた。
AP通信によると、これまでに米21州の司法長官がバイデン大統領の大統領令を覆す訴えを起こしたという。
共和党はキーストーンXLの建設中止に全力で反対しており、党員たちは各地で「バイデンは数万の建設雇用を爆破した」と主張していた。
モンタナ州選出のジョン・テスター上院議員やウェストバージニア州のジョー・マンチン上院議員を含む穏健派の民主党員でさえ、バイデン大統領に再考を促していた。
テスター上院議員は9日の声明で計画の終了に失望したと述べたが、バイデン大統領には言及しなかった。
上院エネルギー委員会のトップ、ワイオミング州選出のジョン・バラッソ上院議員(共和党)はバイデン大統領を激しく罵った。「バイデンはパイプラインを殺し、アメリカの何万もの雇用を殺し、労働者を殺しました...」
大型工事を失ったTCエネジーは声明の中で、「同社は進化するエネルギー需要に対応することに注力している」と述べ、別のプロジェクト工事で70億ドル分の契約を確保していると述べた。
キーストーンXLの工事費は計画の見直し等により、当初の54億ドルから90億ドルまで上昇したと伝えられている。一方、原油価格は2008年には1バレル100ドルを超えたが、ここ数カ月の間に大幅に下落し、現在は70ドル未満にまで落ち込んでいる。