◎バイデン大統領は15日、「米国は動き出した」と語った。
11月15日、米国のジョー・バイデン大統領は1兆ドル(約115兆円)のインフラストラクチャー法案に署名し、待ちに待ったインフラ改修への道を切り開いた。
バイデン大統領は署名式に出席した超党派の議員と記者団に、「私たちは成し遂げました」と語った。
しかし、インフラ法は民主党と共和党の溝を深め、1.85兆ドル(約210兆円)の通称ヒューマンインフラ法案(ビルド・バック・ベター法案)の採決時期は全く見通せず、議会上院を通過できるかどうかすら分からない。
下院民主党はヒューマンインフラ法案の予算を3.5兆ドル(約400兆円)と見積もったが、共和党と上院民主党の一部議員はこれを速やかに却下した。民主党の指導部は予算の圧縮に応じたが、共和党はさらなる削減を求めている。
バイデン大統領は演説の中で、「米国は動き出した」と語った。「米国民の人生は、この一世代に一度のインフラ法でより良く変わるでしょう...」
上院は今年8月、極めて稀な超党派交渉の末、インフラ法案を賛成69ー反対31で可決した。しかし、一部のリベラルな下院民主党員は、同じく8月に下院を通過した気候変動対策や社会のセーフティネット拡充を含むヒーマンインフラ法案の上院通過を共和党が保証しない限り、下院はインフラ法案の採決を行わないと脅迫した。
チームリベラルの脅迫は上下両院で大混乱を引き起こしたが、約3カ月に及ぶ交渉の末、インフラ法案はようやくバイデン大統領の手元に届いた。
ホワイトハウスによると、バイデン大統領はインフラ法のより詳細な計画を紹介する外遊ツアーをまもなく開始する予定だという。16日の訪問先であるニューハンプシャー州ではボロボロの橋を見学する予定。17日にはデトロイトでゼネラルモーターズの電気自動車工場を見学し、電気自動車用充電ステーションへの投資について関係者と話し合う予定と伝えられている。
超党派の交渉に参加した共和党のロブ・ポートマン上院議員は、インフラ法のコストカットを承認したバイデン大統領の決断を称賛し、署名を祝った。インフラ法の予算額は元々2.3兆ドル(約260兆円)だったが、半分以下に削られた。
一方、ドナルド・トランプ前大統領は先日、インフラ法の超党派交渉に参加した共和党のミッチ・マコーネル上院少数党首を「オールドクロウ(ケンタッキー州で生産されている低価格のストレートバーボン・ウイスキー)」と呼び、インフラ法を「ひどい民主社会主義インフラ計画」と非難した。マコーネル議員はケンタッキー州選出。
オールドクロウと呼ばれたマコーネル上院少数党首は署名式には出席せず、ケンタッキー州のラジオインタビューで「他にやるべきことがある」と語った。
ヒューマンインフラ法案は不確実な未来に直面しているが、バイデン大統領の演説は終始明るく、希望に満ちていた。議会予算局(CBO)はヒューマンインフラ法が債務に与える影響をまとめたデータを15日遅くに公表する予定である。
米国の債務残高は10月18日に借り入れ可能な上限(28.4兆ドル)に達する予定だったが、上院は10月初めに債務借入の一時的な上限引き上げに応じ、債務不履行はひとまず回避された。
テキサス州の共和党員、テッド・クルーズ上院議員は14日に放送されたフォックスニュースのインタビューで、「民主党はこの勢いを利用してヒューマンインフラ法案を押し通す可能性がある」と懸念を表明した。「バイデンたちは全国でインフラ法を自慢するつもりです...」
インフラ法の概要
・道路と橋への投資:1,100億ドル(約12兆円)
全国の主要幹線道路約28万kmと45,000の橋の一部を改修する。新設改良含む。
・公共交通機関への投資:390億ドル(約4.4兆円)
全国の公共交通システムを拡充し、バリアフリー改修を進め、州および地方政府にゼロ・エミッションのバスを購入するための資金を提供する。
・旅客および貨物鉄道への投資:660億ドル(約7.5兆円)
主要な旅客及び貨物鉄道の改修に投資。9年前のハリケーンサンディで影響を受けた貨物ルートを優先。
・電気自動車用充電ステーションへの投資:75億ドル(約8,500億円)
・インターネット通信網への投資:650億ドル(約7.4兆円)
農村部、低所得者層の多い地域、先住民族コミュニティを優先。
・電力網への投資:650億ドル(約7.4兆円)
送電鉄塔、電柱、地中ケーブル、炭素回収技術などに投資。
・空港への投資:約250億ドル(約2.8兆円)
老朽化した管制塔、滑走路、ターミナルビルなどの改修に投資。
・上下水道インフラへの投資:550億ドル(約6.2兆円)