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米国で介護支援制度を求める従業員増加、高齢化が背景に

米国内では現在、6300万人以上の成人が家族の介護を担っているとされ、多くは日常的に仕事と介護を両立している。
介護支援のイメージ(Getty Images)

米国では高齢化が進む中、職場で家族の介護を支援する福利厚生を求める従業員が増えている。高齢の親族の世話とフルタイムの仕事を両立する米国人は多く、これに対応する形で企業や自治体による介護支援制度の充実が求められている。

非営利団体「AARP(全米退職者協会)」の責任者は、出張中に父親が急病で入院した際、雇用主から介護目的の有給休暇を取得できた経験を語る。「休暇をすべて使う代わりに、介護休暇として数日取ることができ、本当に助かった」と述べている。このような有給介護休暇を提供する職場は、従業員の負担軽減につながるとして注目されている。

米国内では現在、6300万人以上の成人が家族の介護を担っているとされ、多くは日常的に仕事と介護を両立している。特に高齢の親の世話をしながら自らの子どもの育児も行う「サンドイッチ世代」の負担は特に大きい。介護に費やす時間は1日平均6時間に上るとの推計もあり、介護期間が数年に及ぶケースも珍しくない。こうした状況は、働きながら介護を続ける人々にとって大きなストレス要因となっている。

米国の連邦法「家族・医療休暇法(Family and Medical Leave Act)」は労働者が家族の看病などのため最大12週間の休暇を取得できる権利を保障している。ただし、この制度は無給であり、従業員数50人以上の雇用主に限られるため、全ての働き手にとって利用しやすいとは言えない。また、無給休暇では生活費の補償がなく、経済的に余裕のない労働者は利用しづらいのが実情だ。

こうした背景を受け、一部の州では育児や家族介護を対象とする有給休暇を義務付ける法律を制定し、従業員に通常給与の一部を支払う制度を整備している。州ごとに支給期間や給付内容は異なるものの、介護と仕事の両立を支援する方向への動きが進みつつある。

企業側も従業員の介護ニーズに対応する取り組みを強化しつつある。有給休暇に加えて柔軟な勤務時間制度やテレワーク、介護に関する相談窓口、リソース提供などが導入されている。こうした介護支援策は従業員の離職防止や採用競争力の向上につながるとの指摘もある。専門家は「包括的な介護支援制度は、単に休暇を与えるだけでなく、実際の介護負担に応じた支援が重要だ」と述べている。

また、技術面でも支援ツールの活用が進む。自宅の高齢者の行動を遠隔で監視できるカメラやモーションセンサー、通知システムなどが普及し、外出中や就業中でも安全確認が可能になっている事例が紹介されている。こうしたデジタル技術は、介護と就業の両立を助ける一助となっている。

米国の高齢化は今後さらに進むとみられ、介護と労働の両立支援は労働政策や企業の福利厚生戦略における重要課題となっている。従業員の福祉向上と労働力の確保を両立させるため、制度改善と企業の対応強化が引き続き求められている。

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