◎米上下両院は、民主党が提案したコロナ救済法案の予算決議を可決した。これは、ジョー・バイデン大統領の約1.9兆ドル(200兆円)のアメリカンレスキュー計画(ARP)を共和党の議事妨害(フィリバスター)を受けることなく可決できる重要な手続きのひとつである。
◎予算決議にはコロナワクチンの製造と流通、失業保険、中小企業向け支援ペイチェック保護プログラム(PPP)などの予算を起草から承認する「議会委員会」の開催および調整指示が組み込まれている。
アメリカンレスキュー計画
アメリカンレスキュープラン(ARP):約1.9兆ドル(200兆円)
2021年????、下院通過↓
2021年????、上院通過
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2021年????、バイデン大統領署名
・COVID-19経済救済法:9,000億ドル
2020年12月20日、上下両院の指導者が合意に達する
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2020年12月21日、下院通過
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2020年12月21日、上院通過
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2020年12月27日、トランプ大統領署名
・コロナ援助、救済、および経済安全保障法(CARES法):2.2兆ドル(230兆円)
2019年7月下院通過
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2020年3月25日上院通過
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2020年3月27日下院、上院の修正に同意
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2020年3月27日トランプ大統領署名
2月5日、米上下両院は、民主党が提案したコロナ救済法案の予算決議を可決した。これは、ジョー・バイデン大統領の約1.9兆ドル(200兆円)のアメリカンレスキュー計画(ARP)を共和党の議事妨害(フィリバスター)を受けることなく可決できる重要な手続きのひとつである。
上院投票の結果は「賛成50ー反対50」、カマラ・ハリス副大統領がタイブレーク票を投じ、「賛成51ー反対50」で可決された。
下院は週の初めに可決したが、上院で修正が加えられたため、5日午後に再投票を行い、「賛成219-反対209」で可決した。
一方、民主党のジョー・マンチン上院議員と共和党のスーザン・コリンズ上院議員率いる超党派グループの提案により、「高所得納税者」は1,400ドルの直接支給を受け取る権利を失った。(賛成99ー反対1)
アイオワ州の共和党員、ジョニ・エルンスト上院議員は最低賃金の引き上げ(時給15ドル)を却下する修正案を提出したが、否決された。バイデン大統領は最低賃金の引き上げを政権公約のひとつに掲げている。
最高裁判所の判事の拡大に反対する共和党のトム・コットン上院議員は、一部の進歩派が提唱するコート・パッキング(最高裁判事の増員)を禁止しようとしたが、「反対51ー賛成50」で却下された。なお、この提案は予算決議およびコロナウイルスとは関係ない。
この日上下両院で可決された予算決議は、1.9兆ドルのARPとは別物である。民主党は「予算調整」と呼ばれるプロセスを使用して、2月下旬もしくは3月上旬に提出されるARPを速やかに可決できるようにする準備を整えた。
予算決議にはコロナワクチンの製造と流通、失業保険、中小企業向け支援ペイチェック保護プログラム(PPP)などの予算を起草から承認する「議会委員会」の開催および調整指示が組み込まれている。
民主党のナンシー・ペロシ下院議長は5日午後の記者会見で、「来週から法案の作成を開始する」と述べた。
ナンシー・ペロシ下院議長:
「できれば2週間以内に上院に法案を送りたい。3月の失業保険満了に間に合わせる」
バイデン大統領は5日の記者会見で、「共和党の支持を受けずにARPを前進させるつもりでいる」と述べたが、超党派の支持を得られるのであれば、「一定の譲歩」もあり得ると強調した。
一方、議会の民主党指導者たちは、共和党と交渉する時間は限られていると誓約しており、バイデン大統領の1.9兆ドルと共和党の提案(6,180億ドル:約65兆円)の溝が埋まる可能性は低い。
ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は先日の記者会見で、「バイデン大統領が求める1,400ドルの直接支給を含む個人、家族、そして企業への提案は守られるだろう」と述べた。
ジェン・サキ報道官:
「アメリカ人の7人に1人が食糧を得ることに苦労している。予算は市民に安心感を与え、誰一人取り残されないと保証しなければならない」
CNNニュースによると、先日バイデン大統領とコロナ予算について話し合った上院共和党員10名はホワイトハウスに書簡を送り、予算交渉の継続を求めたという。
トランプ前大統領の弾劾に賛成している共和党のスーザン・コリンズ上院議員は、「私たちは超党派的なやり方で活動すると約束しており、立法過程が進む中で私たちの見解が考慮されることを望んでいる」と述べた。
民主党(約200兆円)と共和党(約65兆円)の計画の比較
<市民への直接支給>
(民)予算4,650億ドル:年収75,000ドル未満の個人1人に1,400ドル
(共)予算2,200億ドル:年収40,000ドル未満の個人1人に1,000ドル
<失業保険手当>
(民)予算3,500億ドル:1人毎週300ドルから400ドルに増額する。期間は9月まで。
(共)予算1,320億ドル:1人毎週300ドルを至急。期限は3月まで。
<コロナワクチン・検査・追跡>
(民)予算1,600億ドル:地域予防接種センター開設に200億ドル、学校のコロナ検査体制整備に500億ドルなどを提供。
(共)予算1,600億ドル:全国のワクチンプログラム整備、検査の拡大、災害救援基金、独立した診療所および歯科医のための個人用保護具(PPE)などに資金を提供。
<食糧支援>
(民)予算未定:フードバンクへの給付を15%増額し、期限を9月まで延長。
(共)予算120億ドル:フードバンクの強化など。
<中小企業支援>
(民)予算500億ドル:既存の中小企業向け支援「ペイチェック保護プログラム(PPP)」とは別の新しい中小企業を対象とした女性プログラムを提供。また、州、地方、部族、非営利団体向けの資金調達プログラムに350億ドルを投資。
(共)予算500億ドル:PPPと緊急傷害災害プログラムの強化。
<学校再開>
(民)予算1,700億ドル:学生の学問的、社会的、感情的、精神的健康のニーズを満たすために1,300億ドル投資。コミュニティカレッジを含む公立大学、公立および私立の歴史的黒人大学と少数派奉仕機関に350億ドルを寄付。教育プログラム支援予算として州知事に50億ドルを提供。
(共)予算820億ドル:幼稚園から高校までの再開を目指し、予算を投入。
<育児>
(民)予算数百億ドル:チャイルドケアプロバイダーを支援するために、250億ドルの緊急基金を創設。既存のチャイルドケアおよび開発ブロック助成プログラムに150億ドルを投資。
(共)予算数百億ドル:育児と開発ブロック女性プログラムに200億ドルを投資。
<メンタルヘルスサービス>
(民)予算数十億ドル:薬物乱用・精神保健サービス局と保健資源・サービス局に40億ドルを投資。
(共)予算数十億ドル:問題行動医療サービスに40億ドルを投資。
<立ち退きモラトリアム>
(民)パンデミックの期間中に失業した低中所得世帯向けの賃借支援に250億ドル。賃借人の光熱費サポートに50億ドル。立ち退きモラトリアムを9月30日まで延長。
<州ヘの支援>
(民)州政府、地方政府、および準州政府の支援に3,500億ドル。
<税額控除の一時的な増加>
(民)児童税額控除の引き上げに1,200億ドル。(6歳未満:年間3,600ドル、6歳~17歳:年間3,000ドル)
<健康保険料補助金>
(民)失業などで健康保険を失った人の保険料を助成したい。オバマケアの保険料補助金の増額。
<緊急有給休暇>
(民)有給の病気および家族休暇手当の復活。病気、検疫、学校の閉鎖で子供の世話をしている人に14週間の有給休暇を保証する。
<最低賃金引き上げ>
(民)1時間あたり15ドルに引き上げ。共和党は猛反発している。