馬の「いななき」の仕組み解明、米国の研究チームが発表
ウマのいななきは仲間を見つける際や再会の合図、給餌時間の喜びなど、さまざまな社会的な場面で用いられるが、科学者たちはその複雑な音響構造の仕組みについて長らく謎を抱いていた。
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米国の研究チームは23日、ウマ(馬)が発する独特の「いななき」がどのようにして生み出されるかを解明したと発表した。ウマのいななきは仲間を見つける際や再会の合図、給餌時間の喜びなど、さまざまな社会的な場面で用いられるが、科学者たちはその複雑な音響構造の仕組みについて長らく謎を抱いていた。今回の研究成果はウマのコミュニケーションの理解を深める重要な一歩となる。
ウマのいななきは同時に高音と低音を発するという特徴を持つ。低い音は声帯付近の組織を空気が振動させることで生じ、これは人間の話声や歌声の原理と類似しているため、これまで比較的理解されていた部分である。しかし、高音の成分については、ウマのような大型動物が高い周波数を出す仕組みは明らかではなかった。一般に大型動物は声帯や発声器官が大きいため、低い音を出す傾向があるからだ。
研究チームは新たな実験手法として、ウマの鼻孔から小型カメラを挿入し、いななきやウマがしばしば発する比較的穏やかな「ニッカー」と呼ばれる音を発している際の内部の様子を撮影した。また、詳細なスキャンや、死後のウマの声帯器官に空気を通す実験も行った。その結果、高音成分は声帯ではなく、声帯上部の狭い開口部を通過する際に発生する一種の「笛のような音」であることが判明した。空気が声帯を振動させつつ、この狭い開口部を通り抜けることで高音が生じるのである。この仕組みは、人間が口で行う通常の口笛とは異なるという。
このような「二重音」を生み出す能力を持つ大型哺乳類はこれまで確認されておらず、ウマは声帯を使いながら同時に笛のような高音を発することができる唯一の動物とされる。これまでに同様の仕組みは一部の小型齧歯類(ネズミなど)で見られたが、大型哺乳類では極めて異例である。
専門家はこの二重音がウマのコミュニケーションにおいて多彩な感情やメッセージを同時に伝達する役割を果たしている可能性を指摘している。研究の著者であるコペンハーゲン大学のエロディ・ブリーファー(Elodie Briefer)博士は異なる音程のいななきによって、喜びや警戒、要求など複数の意味を同時に表現できるのではないかと述べている。
また、同様の高音を発する能力は野生のプシェワルスキーウマやヘラジカにも見られるが、ロバやシマウマなどウマ科の近縁種では確認されていないという。このため、こうした音声メカニズムがどのように進化したのか、さらなる研究が求められている。
今回の研究成果は学術誌「カレント・バイオロジー(Current Biology)」に掲載された。ウマの発声の仕組みに関する理解が進むことで、動物同士の社会的関係や感情表現の仕組みを解明するうえで新たな知見が得られると期待される。
