米海軍がカリブ海で麻薬密輸船攻撃、今月3回目、トランプ氏が発表
ベネズエラにおける麻薬密売は単なる犯罪組織の活動にとどまらず、政府や軍の中枢が深く関与する「国家主導型」の性格を帯びていると多くの調査や報道で指摘されている。
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トランプ(Donald Trump)米大統領は19日、カリブ海の公海上で「違法な麻薬を密輸していた」とする船に対して、新たな攻撃を命じたと明らかにした。
トランプ氏は自身のソーシャルメディアプラットフォームに声明を投稿。「私の命令により、国防長官は米南部軍管轄区域で麻薬取引を行っている指定テロ組織に関連する船舶に対して、致死的な攻撃を命じた」と投稿した。
トランプ政権はラテンアメリカの麻薬カルテルからの脅威と闘う取り組みの一環として、この地域にイージス艦など、数千人規模の部隊を展開している。
米海軍が「麻薬密輸船」を空爆したのは今月3回目。トランプ氏はいつ攻撃が実施されたか明らかにしていない。
トランプ氏によると、この空爆で「麻薬テロリスト」3人が死亡したという。
ヘグセス(Pete Hegseth)国防長官は高速で航行する船にミサイルが直撃する動画をSNSに投稿した。
国防総省とホワイトハウスはコメントを出していない。
米海軍は今月初め、外国テロ組織に指定されているベネズエラの麻薬組織トレンデアラグアが運航する麻薬輸送船を空爆し、構成員11人を殺害。今週初めの空爆では3人を殺害したと報告していた。
米国務省は2月、トレンデアラグアを含む中南米の8つの麻薬組織を外国テロ組織に指定した。
トレンデアラグアはベネズエラ北部アラグア州の刑務所で創設されたギャング。ベネズエラ当局は23年、この組織を解体したと発表したが、幹部の行方は分かっていない。
ベネズエラにおける麻薬密売は単なる犯罪組織の活動にとどまらず、政府や軍の中枢が深く関与する「国家主導型」の性格を帯びていると多くの調査や報道で指摘されている。特に注目されるのが「太陽のカルテル」と呼ばれるネットワークで、これは国軍将校が身につける階級章の「太陽マーク」に由来する名称である。この組織は麻薬取引を独占的に管理し、南米最大のコカイン生産国コロンビアからの密輸ルートを押さえ、カリブ海を経由して米国や欧州に流す経路を確保している。
2000年代に入り、チャベス政権は反米的姿勢を強め、国際的に孤立していった。その過程で麻薬取引が外貨獲得の手段としてますます重視されるようになったとされる。治安部隊や情報機関、国営石油企業PDVSAの一部に至るまでがこのネットワークに組み込まれ、密輸を円滑に進めるためのインフラや資金洗浄に利用されていると伝えられている。さらに、軍の航空機や港湾施設が輸送に使われることで、通常の犯罪組織では不可能な規模の取引が可能になっている。
マドゥロ政権下でも構造は維持され、むしろ強化されている。米財務省や国連の報告では、政権幹部や軍高官の関与が繰り返し指摘されており、実際に幾人かの元閣僚や将軍が麻薬取引容疑で国際指名手配を受けている。こうした「国家ぐるみ」の密売は国内経済の崩壊と密接に関連しており、石油収入が激減した後、麻薬が政権維持のための重要な収入源となっている。
結果として、ベネズエラは単なる「通過国」ではなく、政府が関与する「麻薬国家」とみなされつつある。麻薬収益は軍や治安機関の忠誠を買う手段となり、反政府勢力の抑圧にも利用されている。国際社会は制裁や司法措置で圧力を強めているが、国内体制の腐敗と権力の集中により、現状を変えるのは容易ではない。こうした状況は南米全域の治安や国際麻薬市場に深刻な影響を及ぼし続けている。