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イギリスの人気音楽フェスが中止に、カニエ・ウェスト問題


問題の発端はイェさんが過去に繰り返してきた反ユダヤ的発言やナチズムを肯定するような言動である。
ラッパーのカニエ・ウェストさん(AP通信)

イギリス・ロンドンで7月に開催予定の音楽イベント「ワイヤレス・フェスティバル(Wireless Festival)」が中止に追い込まれた。主催者がヘッドライナーとして起用していた米国の人気ラッパー、カニエ・ウェスト(本名イェ)さんについて、イギリス政府が入国を認めなかったことが直接の原因である。

問題の発端はイェさんが過去に繰り返してきた反ユダヤ的発言やナチズムを肯定するような言動である。スターマー政権はこうした経歴を踏まえ、イェさんの入国が「公共の利益にかなわない」と判断し、電子渡航認証(ETA)を取り消した。これにより、同フェスは開催自体が不可能となり、主催者は中止を決定した。

ワイヤレス・フェスティバルは2005年に始まったイギリス有数のヒップホップ音楽イベントで、例年数万人規模の観客を集める。2026年は7月10日から12日にかけて開催予定で、イェさんが3日間すべてのヘッドライナーを務める計画だったが、その構成ゆえに代替アーティストの確保が困難で、中止という判断に至ったとされる。

今回の決定の背景には政治や社会からの強い批判があった。スターマー(Keir Starmer)首相はイェさんの起用について、深刻な懸念を表明し、反ユダヤ主義に対する厳格な姿勢を示した。また、ユダヤ人団体も出演に反対し、真摯な反省が示される前に大舞台に立つべきではないと訴えていた。

さらに、スポンサー企業の動きも中止を後押しした。ペプシやディアジオなど主要スポンサーが相次いで撤退し、イベントの運営基盤が揺らいだ。こうした圧力の高まりの中で、フェスを主催するフェスティバル・リパブリックは最終的に開催断念を発表し、チケット購入者に全額返金するとした。

イェさんはこれまでの発言について謝罪し、双極性障害による影響を理由に挙げるとともに、イギリスのユダヤ人コミュニティと対話する意向を示していた。しかし、批判の収束には至らず、過去の言動が依然として大きな影響力を持つことが改めて示された。

今回のフェス中止は表現の自由と社会的責任のバランスをめぐる問題を浮き彫りにした。人気アーティストであっても、その発言や行動が社会的に重大な影響を及ぼす場合、文化イベントの場に立つ資格が問われることになる。イギリス内務省の判断は反ユダヤ主義に対する明確な拒否の姿勢を示すと同時に、エンターテインメント業界にも倫理的責任を強く意識させる結果となった。

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