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IEA、過去最大の石油備蓄放出で合意、4億バレルを市場に投入


IEAはパリを拠点とする国際機関で、1974年の設立以来、世界のエネルギー安全保障の確保を使命としている。
2026年3月5日/イラン、首都テヘランの通り(ロイター通信)

主要先進国を中心とする国々は11日、原油価格の急騰に対応するため、過去最大規模となる非常用石油備蓄の放出で合意した。国際エネルギー機関(IEA)加盟国による協調放出は進行中のエネルギー危機を緩和し、世界の市場安定を図ることを目的としている。

IEAはパリを拠点とする国際機関で、1974年の設立以来、世界のエネルギー安全保障の確保を使命としている。今回の放出合意では加盟32カ国が合計4億バレルの原油を緊急備蓄から市場に供給することで一致し、その量は2022年にロシアによるウクライナ侵攻に対して実施された1億8270万バレルを大きく上回り、過去最大規模となる。

この異例の協調放出は中東地域での軍事衝突の影響で石油輸送の要衝であるホルムズ海峡を事実上通過できない状況が長引き、原油と精製製品の供給が著しく減少していることを背景としている。ホルムズ海峡は世界の原油輸送量の2割が通る重要航路で、米イラン紛争激化に伴う物流の停滞が価格を押し上げている。

IEAのファティ・ビロル(Fatih Birol)事務局長は、「市場の混乱に直面している緊急の課題に対応する重要な措置だ」と述べつつ、石油・天然ガスの安定供給の回復にはホルムズ海峡を含む供給ルートの正常化が最も重要であると強調した。

加盟国のうち、主要国ではドイツやオーストリア、日本がそれぞれ備蓄からの放出を表明している。ドイツ政府によると、同国は約264万トンの備蓄を放出する方針で、今後数日以内に供給が始まる見込み。一方、日本は早ければ3月16日にも独自に国家備蓄を市場に供給する準備を進めていると報じられている。

IEA加盟国全体では、公共備蓄として1億2000万バレル以上、さらに政府による産業備蓄として6000万バレルを超える在庫を保有し、今回の放出はこうした戦略備蓄の一部を市場に解放する形となる。

世界のエネルギー市場ではここ数週間、原油価格が大幅に上昇し、紛争前の水準を大きく上回る場面も見られた。IEAによる今回の協調放出への反応として一部市場では原油価格が短期的に下落する動きもあるものの、専門家の間では供給網の混乱が続く限り、今回の措置だけでは根本的な安定には至らないとの見方も出ている。

IEA加盟国だけでなく、G7のエネルギー相会合でも備蓄放出を含む対応策が協議され、国際的な連携の必要性が確認された。各国政府は原油価格の高騰が経済活動や消費者負担に与える影響を懸念しており、短期的な市場安定に向けた対応を急いでいる。

今回の記録的な備蓄放出合意は戦後のエネルギー市場における国際協調の象徴的な行動となる可能性がある。世界的な原油供給の混乱が続く中で今後の市場動向や価格推移に重大な影響を及ぼすことが予想される。

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