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モルドバの主要河川に油流出、ロシアのウクライナ攻撃で上流の発電所が被災


原因は隣国ウクライナ南部でのロシア軍による発電所への攻撃によって発生した油流出がドニエストル川を汚染し、水源が深刻な被害を受けたためである。
2026年3月16日/モルドバ、ウクライナ国境近くを流れる河川(CNMC Moldova)

モルドバ北部の主要都市であるバルツィ(人口約9万人)など、複数の都市で水道供給が全面的に停止する事態となり、政府が環境非常事態を宣言した。原因は隣国ウクライナ南部でのロシア軍による発電所への攻撃によって発生した油流出がドニエストル川を汚染し、水源が深刻な被害を受けたためである。モルドバ政府はこの事故についてロシアに全面的な責任があると非難している。

事態が発生したのは3月7日、ウクライナ南西部の水力発電所がロシア軍の空爆を受けたことに端を発する。この攻撃により施設から大量の油が流出し、ドニエストル川に流れ込んだ。この川はモルドバとウクライナの国境を流れる主要河川で、同国北部の都市をはじめ広範な地域の水供給源となっている。油は急速に下流のモルドバ領域に広がり、バルツィを含む複数の自治体で飲料水や生活用水が利用できなくなった。

モルドバ政府は15日間の環境非常宣言を発令し、汚染の拡大防止と住民の安全確保に全力を挙げて対応している。影響を受けた地域では学校が閉鎖され、生徒はオンライン授業へ移行した。また、軍隊や専門チームが現地に派遣され、水質管理や浄化作業、汚染物質の回収・封じ込めに当たっている。汚染が続く限り、住民には川の水の飲用・調理利用を控えるよう強く呼びかけられている。

サンドゥ(Maia Sandu)大統領は先週の声明で、「我々は自国民を守るために環境警戒を宣言し行動している。ロシアはこの汚染に対して全面的な責任を負うべきだ」と述べた。また、外務省が駐ロシア大使を召還し、攻撃とそれによる汚染がモルドバの水安全保障に重大なリスクをもたらしたとして強く抗議した。政府当局は事件がモルドバとウクライナ双方の住民に深刻な健康・環境被害を及ぼす可能性があるとして警戒を強めている。

この断水はモルドバが直面する安全保障上・環境上の新たな危機を象徴する出来事といえる。同国は欧州でも最も貧しい国の一つであり、ドニエストル川のような天然資源への依存度が高い。飲料水や農業用水の供給源が汚染されることは、生活基盤の広範な混乱を招くだけでなく、地元経済と住民の健康に長期的な悪影響を及ぼす恐れがある。

EUはモルドバへの支援を表明し、環境浄化や水質管理のための援助を提供する意向を示している。またEUは「この事件はロシアの戦争が国境を越えて広範な影響を及ぼしていることを示す」と述べ、モルドバへの連帯を強調した。

一方、モルドバ国内では水道供給の停止が地域社会の不満を増幅させている。住民は安全な水の確保に苦慮し、今後の水質回復やインフラ修復にどれだけの時間とコストがかかるかに関心が集まっている。また、今回の事故を契機に政府が災害対策や水資源保全の強化策を打ち出すかどうかも注目されるところだ。

モルドバ当局は油の完全な除去と水道供給の復旧に向けて国際機関や同盟国との協力を進めているが、依然として先行きは不透明であり、住民生活への影響は今後も続く可能性がある。汚染源の特定と責任の所在、再発防止策が国際社会の議論の焦点となっている。

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