ルーブル美術館で漏水、エジプト美術部門の書籍が損傷
被害を受けたのは19世紀末から20世紀初頭に刊行された「エジプト学関係の学術雑誌や文献類」で、研究者らが使用していたもの。館側は「唯一無二の貴重本」ではないと説明している。
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フランス・パリのルーブル美術館で先月下旬に起きた水漏れにより、同館の古代エジプト美術部門の図書室で所蔵されていた書籍数百冊が損傷した。
被害を受けたのは19世紀末から20世紀初頭に刊行された「エジプト学関係の学術雑誌や文献類」で、研究者らが使用していたもの。館側は「唯一無二の貴重本」ではないと説明している。
それによると、確認された被害は「300〜400冊程度」で、被災した本は現在、吸水紙を用いてページごとに乾燥処理中であるという。
問題の原因は老朽化した配管設備による水漏れ。該当配管は数か月前から使用を停止していたものの、交換は先延ばしにされていた。館側は改修を2026年9月に予定していると明かしている。
今回の事故は同館が直近で経験した問題のひとつ。10月には1億200万ドル相当とされる宝石の強盗事件が発生し、美術館のセキュリティ体制に対する批判が高まっていた。さらに、11月にはギリシャ陶器などを展示するギャラリーの一部が“構造的弱点”を理由に部分閉鎖されていた。
また、10月に公表された会計検査院の報告書では、ルーブルが作品の買い付けに過剰な資金を割いた結果、インフラ整備や設備更新に十分な予算が回っていないと指摘されていた。今回の水漏れ事故は、まさにその懸念が現実となった形である。
館側は「文化財として唯一無二の作品に関する不可逆的な損失は確認されておらず、現時点で“取り返しのつかない被害”はない」と説明している。被災した図書や資料は乾燥・修復後、再び書架に戻される見通しだ。
今回の一連のトラブルは、世界で最も多くの来館者を誇るルーブルにおいて、収蔵品の保存と展示の土台となる「インフラの劣化」が、いかに深刻かを改めて浮き彫りにするものとなった。今後の改修と、文化財保護体制の強化が求められている。
