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ベネズエラ大統領拘束、ロシアにとって「呪いであり、恩恵」

米軍がマドゥロ大統領を拘束した作戦は、ロシアにとってベネズエラで築いてきた戦略的影響力を損なう一方で、ロシアに外交的な“説得材料”を与える面もあると専門家らは分析している。
2025年5月7日/ロシア、首都モスクワ、プーチン大統領(左)とベネズエラのマドゥロ大統領(AP通信)

米軍によるベネズエラでの軍事行動はロシアのプーチン(Vladimir Putin)大統領にとって「恩恵であり、呪いでもある」との見方が広がっている。米軍がマドゥロ(Nicolas Maduro)大統領を拘束した作戦は、ロシアにとってベネズエラで築いてきた戦略的影響力を損なう一方で、ロシアに外交的な“説得材料”を与える面もあると専門家らは分析している。

米軍の迅速な行動は、かつてロシア軍がウクライナ首都奪取を試み失敗した事例と重ねられている。マドゥロ政権はロシアの重要な同盟国であり、ロシアは同国の石油産業に巨額の投資を行い、防空システムや兵器の提供を続けてきた。だが米軍の介入により、ロシアは西半球における戦略的拠点を失う可能性が高まり、投資した資金や影響力の喪失が避けられない状況となっている。

ロシア政府は今回の米軍行動を「露骨な侵略行為」と非難しているが、プーチン氏自身が公の場でコメントすることはなく、外交官らが批判を展開しているにとどまっている。メドベージェフ(Dmitry Medvedev)安全保障会議副議長は、米国の行為を国際法違反と断じつつも、米国が自国の国益を積極的に守っている点は認めざるを得ないと述べた。

一方で、ロシア側はこの状況を自国の正当性を主張する機会としても利用できるとの見方がある。今回の米軍行動は、国際社会における大国の「影響圏」論争を再燃させ、ロシアはウクライナ侵攻に対する批判への反論材料として、「米国も他国の主権を侵害している」と強調する可能性がある。これにより西側諸国の結束にほころびが生じるとの懸念も指摘されている。

歴史的背景として、プーチン政権は2014年のクリミア併合以降、「ロシアの安全保障に脅威を与える西側の勢力拡大を阻止する」と主張してきた。特にNATOの東方拡大やウクライナの同盟志向を侵略理由の一つに挙げてきたが、米国が自国の影響圏であるとみなす地域に軍事介入した今回の事例は、プーチン政権の理論を逆手に取る格好になっているとの指摘もある。

一部のロシア専門家は、米軍行動を契機にロシアがウクライナ戦線での軍事行動を一段と強化する可能性を指摘する。ウクライナに対する全面的な制圧を達成することこそが、ロシアが大国としての地位を再確認する唯一の方法だとする強硬論者も存在し、このようなナショナリスト的な反応が軍事戦略に影響を及ぼす恐れがあるという。

このように米軍のベネズエラ介入は、ロシアにとって外交的圧力と戦略的損失という二面性をもたらす出来事となっている。プーチン政権が今後どのようにこの状況を国内外に説明し、対応していくかが注目される。

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