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800人以上の移民が英仏海峡を横断、イギリス内務省が発表

通常、冬季は強風や荒天などで渡航が減少する傾向にあるが、今月はこれまでに2163人が海峡を渡り、昨年12月の記録(3254人)に迫る勢いとなっている。
ドーバー海峡、イギリスを目指す亡命希望者たち(Getty Images)

イギリス内務省は20日、英仏海峡を通じて803人の移民が小型ボート13隻でイギリスへ渡ったと明らかにした。この数字は2018年以降で、12月としては単日最多の到着数とみられる。

通常、冬季は強風や荒天などで渡航が減少する傾向にあるが、今月はこれまでに2163人が海峡を渡り、昨年12月の記録(3254人)に迫る勢いとなっている。

移民たちはフランス北部の海岸から夜間に出航。イギリス海峡当局や救助組織によってケント州の港へ運ばれた。到着者は多くが救命胴衣を着用していたが、混雑した小型船で危険な海域を渡るこの航路は依然として多くの死傷事故を伴う危険なルートだと指摘されている。

今年英仏海峡を越えた移民の総数は4万1455人に達し、2018年に統計が開始されて以来、2022年の4万5774人に次ぐ高水準となっている。この数字は2024年の総数(3万6816人)をすでに上回っており、年末に向けてさらに増加する可能性も指摘されている。

イギリス政府は密航防止や国境管理の強化策として、フランスとの協力拡大や欧州各国との情報共有を進めている。ドイツでは密航斡旋に関与した者に対して10年以下の禁錮刑を科す法律が成立し、取り締まりを強化する姿勢を示しているほか、フランスも出航前の段階で小型ボートの出発を阻止する方針を打ち出している。

一方で、国内ではスターマー政権の対応を巡る批判も強まっている。与党支持者の一部からは、政府が流入を十分に抑制できていないとの意見が出ており、野党も「国境管理が機能していない」と非難している。政府側は安全確保と密航対策を両立させる必要性を強調しつつ、「救助と取り締まりの両面で取り組んでいる」と述べている。

移民増加の背景は多様で、アフガニスタン、シリア、イラン、ベトナム、エリトリア、スーダン、イラクなど複数の国・地域出身者が含まれているとの分析もある。こうした人々は戦争、貧困、人権侵害などを逃れて欧州へ向かうケースが多い。

英仏海峡は世界で最も交通量の多い海域の一つであり、密航船による渡航は国際的にも大きな人道・安全保障の課題となっている。イギリス政府は引き続きフランスおよびEU加盟国と協力し、密航の根本原因に対処しながら、危険な海上ルートを選ばざるを得ない人々への支援と管理を強化する方針を示している。

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