◎制裁の対象はベラルーシの国営企業9社。6月3日に発効する予定。
2021年5月25日/ワシントンD.C.ホワイトハウス、ジェン・サキ報道官(ゲッティイメージズ/AFP通信)

5月28日、ホワイトハウスは声明で、ジャーナリストを逮捕するために民間の旅客機を恣意的に強制着陸させたベラルーシに対する制裁を再開すると発表した。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は事件を「国際規範を侮辱するあるまじき行為」と呼び、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領に対し、事件に対する信頼できる国際調査を許可し、今回逮捕したふたりを含む全ての政治犯を直ちに釈放するよう求めた。

サキ報道官は、「制裁の対象はベラルーシの国営企業9社」と述べたうえで、「ルカシェンコ政権の主要閣僚や関係者に対する対象を絞った制裁リストを作成するために、EUやその他の同盟国と協議を進めている」と政府への制裁も準備していると明かした。国営企業に対する制裁は6月3日に発効する予定。

ABCニュースによると、米財務省はルカシェンコ大統領に制裁を科す新たな大統領令を準備しているという。

米国務省は28日、アメリカ国民にベラルーシへの渡航を控えるよう警告を発し、連邦航空局(FAA)は航空各社にベラルーシの空域への飛行を検討する場合は細心の注意を払うよう促した。

ルカシェンコ大統領はギリシャからリトアニアに向かっていた英ライアンエアーの旅客機の機内に爆弾が仕掛けられているとウソをつき、首都ミンスクの空港に着陸させたうえで、搭乗していたジャーナリストのラマン・プロタセビッチ氏とガールフレンドのソフィア・サペガ氏を逮捕した。

EUの首脳は先日開催されたサミットでルカシェンコ大統領を厳しく非難し、制裁を科すことに合意したが、ベラルーシ当局は「搭乗客をイスラム過激派組織ハマスの爆弾テロから守った」と主張し続けている。

2021年5月28日/ロシア、ソチの黒海リゾート、ウラジーミル・プーチン大統領とベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領(スプートニク/クレムリン/プール/AP通信)

一方、ベラルーシの同盟国ロシアは、窮地に追い詰められたルカシェンコ大統領を温かく迎え入れた。

ソチの黒海リゾートにルカシェンコ大統領を招いたウラジーミル・プーチン大統領は満面の笑顔で、「ボリビアの大統領専用機も着陸を余儀なくされましたが、大丈夫です。誰もが黙っていました」と語った。

南米ボリビアのエボ・モラレス元大統領を乗せてロシアを発った大統領専用機は2013年、オーストリアのウィーンに予定外の着陸を余儀なくされた。フランスとポルトガル当局は専用機内に米中央情報局(CIA)の元職員、エドワード・スノーデン容疑者が搭乗している可能性があるとして領空への進入許可を取り消したが、情報は誤りだった。

ルカシェンコ大統領はEUの制裁に暴言を吐き、「EUの指導者たちは野党を扇動し、抗議活動を再燃させようとしている」と憤慨した。「EUは誤った情報を世界に拡散し、ベラルーシの国内情勢を悪化させようとしています...」

ルカシェンコ大統領はリラックスした様子で不敵な笑みを浮かべるプーチン大統領とは異なり、終始イライラしとても緊張していたと伝えられている。プーチン大統領はルカシェンコ大統領を水泳に誘ったが、実現しなかった。

ルカシェンコ大統領は西側諸国は不誠実で偽善的と暴言を吐いた。「彼らは搭乗客を救うために行動した航空会社の職員を罰したのです!忌まわしい!」

プーチン大統領は同情の念を込めてうなずき、「大丈夫です」とルカシェンコ大統領をなだめた。「私たちは首尾一貫して、急ぐことなく、団結を深めるために動いています。何も心配しなくていい」

多くの専門家は、新たなEUの制裁により、ルカシェンコ大統領はクレムリンの餌食になる可能性があると警告している。ロシアはルカシェンコ大統領の孤立を利用して、より緊密な統合(併合)を推進する可能性がある。

西側諸国の一部の専門家や関係者は、「ライアンエアーの強制着陸にはロシアが関与している」と主張したが、クレムリンはこの主張を怒って却下している。

ある専門家は、「ロシアはウクライナとジョージアに続き、ベラルーシも狙っている」と述べた。

ロシア軍はウクライナとジョージアの分離主義者を力強くバックアップし、内戦を引き起こした。ルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国はウクライナから、アブハジア自治共和国と南オセチア共和国はジョージアからの独立を宣言したが、国際社会はこれを認めていない。

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