NATOが欧州に焦点を当てる、米国の指導力後退も
NATO内では、米国の姿勢変化を踏まえつつも、同盟が共通の安全保障課題に対処するため連携を強める必要があるとの認識が共有されている。
とコルビー米国防次官補(AP通信).jpg)
北大西洋条約機構(NATO)の加盟国は12日、米国が同盟内での指導力を後退させているとの懸念を抑えつつ、これまで以上に欧州の防衛に注力する姿勢を強調した。西側諸国は米国の関与が相対的に薄れている中でもNATOの結束と安全保障強化を図る必要性を訴えた。
この日、NATO本部(ブリュッセル)で国防相会合が開催され、米国を代表して出席するはずのヘグセス(Pete Hegseth)国防長官が欠席した。昨年12月にはルビオ(Maro Rubio)米国務長官も外相会合を欠席しており、2回続けて主要会議に閣僚が参加しない異例の事態となっている。米国は今回、コルビー(Elbridge Colby)国防次官補を代理として送り込み、米国の関与を示したものの、過去の政権に比べると、関与の度合いが低下しているとの受け止めが広がっている。
各国の反応は冷静なものが多く、欧州側は米国不在を「重大なシグナル」とはみなしていないとの立場を示した。アイスランド国防相は記者団に対し、「確かに閣僚が出席する方が望ましいが、悪いシグナルとは言えない」と述べ、ドイツ国防相も「各国が多忙な中で出欠は変動する」と理解を示した。NATOのルッテ(Mark Rutte)事務総長は同盟の目的が依然として米国と欧州の協力にあることを強調しつつ、欧州側のより大きな役割を歓迎する考えを示した。
欧州諸国はロシアによるウクライナ侵攻を受けて防衛能力強化を進めており、特にドイツは今後数年で1000億ユーロ規模の軍備近代化計画を打ち出している。この投資はNATO加盟国全体の集団防衛力向上を目指す動きのひとつで、「米国が全てを担うのではなく、欧州自身が防衛を担う必要がある」という認識が高まっている。
ウクライナへの支援を巡っても変化が生じている。イギリス国防相は12日、ウクライナへの緊急対空防衛支援として追加で5億ポンドを提供すると発表し、スウェーデンは米国製兵器の購入資金を拠出する意向を示した。オランダはF16戦闘機の操縦訓練用シミュレーターをウクライナに送る計画を明らかにするなど、欧州側の軍事支援が活発化している。
また、会合では新たな軍事任務「アークティック・セントリー(Arctic Sentry)」と呼ばれる枠組みも発表された。これは高北極圏における安全保障上の懸念に対応するもので、デンマークやノルウェーが実施してきた軍事演習をNATO全体の枠組みで統合・調整する試みである。ただし、これは長期的な作戦ではなく既存演習の再ブランド化であり、米国が今後どの程度関与するかは不透明だとの指摘がある。
NATO内では、米国の姿勢変化を踏まえつつも、同盟が共通の安全保障課題に対処するため連携を強める必要があるとの認識が共有されている。特にロシアのウクライナ侵攻という現実的な脅威に対応するには、欧州側の防衛負担を増やすだけでなく、集団安全保障の枠組み自体を強化していくことが求められている。
