◎ウクライナ東部で進行中の危機を緩和する西側とロシアの交渉は行き詰まっているように見える。
1月16日、ウクライナは政府のウェブサイトに対するサイバー攻撃を「ロシアのハイブリッド攻撃」と呼び、「ロシア軍はウクライナに対する攻勢を強めている」と述べた。
マイクロソフトは15日の声明で、「ウクライナ政府の数十台のコンピュータシステムがランサムウェアを装った破壊的なマルウェアに感染した」と報告していた。
米国はウクライナに対するロシアの攻撃および圧力を非難し、「自作自演の偽旗作戦を開始しようとしている」と述べたが、ロシアは西側の主張をすべて却下している。
ウクライナのデジタル開発庁は16日の声明で、「証拠はロシアがサイバー攻撃の背後にいることを示している」と述べ、ロシア政府を非難した。「ロシアはウクライナに対するハイブリッド攻撃を続けており、サイバースペースで今も積極的に活動しています...」
ウクライナ東部で進行中の危機を緩和する西側とロシアの交渉は行き詰まっているように見える。ジョー・バイデン大統領は外交での問題解決を望んでいるが、西側がウラジーミル・プーチン大統領の厳しい要求を受け入れる可能性は低いと見られている。
マイクロソフトは15日の声明で、「1月13日に最初のマルウェアを検出した」と報告した。これはウクライナ政府の約70のウェブサイトが一時的にオフラインになった日と一致する。
またマイクロソフトは別の声明で、「影響を受けたシステムは複数の政府、非営利および情報技術組織に及んでいる」と述べた。
ウクライナのデジタル開発庁は政府のウェブサイト以外の被害状況を把握していないが、調査を進めていると明らかにした。
一方、米国務省のジェイク・サリバン大統領補佐官は16日の定例会見で、「ウクライナ政府に対するサイバー攻撃の調査を継続している」と述べた。
またサリバン補佐官は16日に放送されたCBSニュースのインタビューの中で、「米国は数カ月前からロシアのサイバー攻撃に警戒するよう世界に呼びかけており、ウクライナと協力してセキュリティシステムのさらなる改善を図る」と強調した。「今回のサイバー攻撃はロシアのプレイブックのひとつです」
ウクライナ政府にセキュリティシステムを提供している民間企業の代表はAP通信に、「ロシアのマルウェアは2020年12月の米国に対するサイバー攻撃のようにウクライナ政府のシステムに侵入した」と語った。
テキサス州に本拠を置くサイバーセキュリティ企業ソーラーウィンズに対するサイバー攻撃は米国務省、財務省、疾病予防管理センター(CDC)、連邦捜査局(FBI)、数百の大手民間企業のシステムに被害を与えた。ロシアは関与を否定している。
ウクライナ政府は2017年にもロシアのノットペトヤ・ウイルスの被害を受けている。このウイルスもランサムウェアを装いネットワークに侵入するマルウェアのひとつで、世界で猛威を振るい、被害総額は100億ドル以上と見積もられている。
ウクライナ政府は13日のサイバー攻撃後にコンピュータの画面に表示された「最悪の事態を覚悟せよ」「データを破壊し流出させた」などと言った脅迫は実際には起こらなかったと強調した。