◎ヘルソン州は開戦後まもなく、ロシア軍に占領された。
ウクライナ政府は30日、南部ヘルソン州のほぼ全域で激しい戦闘が発生したと報告した。
ウクライナ公共放送などによると、ウクライナ軍はロシア軍が南部ヘルソン州に建設していた舟橋やフェリーを破壊したという。
ヘルソン州は開戦後まもなく、ロシア軍に占領された。
西側の専門家はヘルソン州で戦闘が激化したというウクライナ政府の報告を認める一方、奪還は一筋縄ではいかないと指摘している。
ヘルソン州の西に位置するミコライウ州政府はテレグラムに、「南部のウクライナ軍は24時間体制で働いている」と投稿した。
ウクライナ大統領府はヘルソン州のロシア軍の第一防衛戦を突破してと報告している。
しかし、ロシア国防省はこれを否定し、ウクライナ兵数百人を殺害したと主張した。
ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は週末のビデオ演説で、東部ドンバスと南部の占領地をすべて奪還すると改めて表明し、ロシア軍を追い払うまで戦うと国民に約束した。
しかし、奪還作戦の詳細はほとんど明らかにされておらず、公共放送は政府高官の話を引用し、市民に「忍耐」を要求している。
ウクライナ軍は30日、ヘルソン州で戦闘が激化し、ロシア軍が補給路として利用しているドニエプル川に架かる3つの橋を破壊したと報告した。
ウクライナ軍は米軍の高軌道ロケット砲システム「ハイマース」などの長距離兵器を駆使して、前線のはるか後方からロシア軍の司令部、補給ルート、弾薬庫などを破壊しているとみられる。
米シンクタンク「戦争研究所」によると、ドニエプル川の橋の破壊はロシア軍の進路と補給ルートを断ち、食料や弾薬の補充を難しくする可能性があるという。
一方、ウクライナ軍は橋の破を「敵の兵力をゆっくり削るもの」と表現し、ヘルソン州の奪還作戦にはかなりの時間がかかると国民に注意を促した。
英国防省は30日、南部ヘルソン州周辺のロシア軍部隊について、「要員が圧倒的に不足しており、補給ルートも非常にもろい」という分析結果を公表した。
また同省は、「ウクライナ軍の軍事力は西側の助けによって徐々に強化される一方、国外での戦いを強いられているロシア軍は確実に弱体化している」とした。
同省はヘルソン奪還作戦作戦について、「ウクライナ軍は占領地を取り戻し、ロシア軍を追い出せるということを同盟国に証明すれば、結束はより一層固く、強固なものになる」という見方を示した。
戦争研究所は、「ロシア軍の補給ルート遮断は大きな効果を上げているため、ウクライナ軍はこれからもハイマースによる遠距離攻撃を続ける」と予想した。
また戦争研究所は現在の戦いを「消耗戦」と評し、「ウクライナ軍は西側の兵器と地の利を生かしてロシア軍の士気を低下させ、死傷者を増やし、撤退を促す」とした。
一方、ウクライナ公共放送は専門家の話を引用し、「政府はヘルソン州での白兵戦を望んでおらず、兵士が直接攻撃を仕掛ける可能性は低い」と報じた。「南部軍は被害を最小限に抑えるために遠距離から攻撃をしかけると予想されるため、ヘルソン奪還にはそれ相応の時間がかかるだろう...」
また公共放送はロシア軍を「袋小路に追い詰められたネズミ」にたとえ、「入り口を遠くから破壊し、後退させ...これを繰り返すことで否が応でも出口を探さざるを得なくなる」とした。
専門家によると、10月中旬以降は野道がぬかるむ「ラスプティチャ(Rasputitsa)」と呼ばれる自然現象の影響で戦車の走行が困難になるため、ウクライナ軍はその時期までにロシア軍を撤退させたいと考えている可能性があるという。