◎ザポリージャ原発は欧州最大の原発で、3月に親ロシア勢力の支配下に置かれ、ウクライナの技術者が運用している。
国際原子力機関(IAEA)は3日、親ロシア勢力の支配下に置かれているウクライナ南部ザポリージャ州の原子力発電所について、制御不能状態に陥っていると深刻な懸念を表明した。
グロッシ(Rafael Grossi)事務局長は国連本部の記者団に対し、「ザポリージャ原発は定期点検と修理を必要としている」と語った。
ザポリージャ原発は欧州最大の原発で、3月に親ロシア勢力の支配下に置かれ、ウクライナの技術者が運用している。
米国のブリンケン(Antony Blinken)国務長官は今週初め、ロシア軍がこの原発を「核の盾」として利用していると非難した。
ウクライナ政府によると、ロシア軍は原発の敷地内に軍隊を駐留させ、兵器などを保管しているという。
ロイター通信はザポリージャ州の親ロシア指導者の話を引用し、「ウクライナ軍は西側から供与された兵器で原発を攻撃している」と報じている。
ロシア軍の原発占領は国際的な批判を招いた。国連によると、戦争で原発が攻撃を受けたり占領されたりするのはこれが初めて。
ウクライナの技術者は限られた資源でザポリージャ原発を運用しているものとみられる。
グロッシ氏は記者会見で、「状況は切迫している」と語った。「原発の安全に関するあらゆる原則が破られ、いつ崩壊してもおかしくありません...」
IAEAはザポリージャ原発の査察を速やかに行いたいとしている。しかし、ザポリージャ州を含む南部地域では戦闘が続いているとみられ、訪問には国連だけでなくロシアとウクライナの承認・監視が必要である。
ウクライナの原子力管理当局は6月、「政府はIEAEの訪問を認めず、査察はロシアの占領を正当化することになる」と警告した。
グロッシ氏は「査察を実現するためには保護が必要であり、それはロシアとウクライナの協力を意味する」とした。
しかし、ザポリージャ州の一部を占領した親ロシア勢力は9月にロシア編入の是非を問う住民投票を行うと主張しており、ウクライナ軍はそれまでに同州を奪還する必要がある。
グロッシ氏はAP通信のインタビューの中で、「IAEAは原発をチェックしたいだけだ」と述べている。また検査を必要とする核廃棄物がそこに大量に保管されていることも強調した。
グロッシはザポリージャ原発で災害が発生すれば、「天災ではなく、世界のせいになる」と警告した。
ロシア軍が原発を「核の盾」と利用していると非難したブリンケン氏は次のように述べている。「ウクライナ軍はザポリージャ州に関しては、反撃できない...」
ロシア軍は開戦直後に北部のチョルノービリ(チェルノブイリ)原発を占領したが、5週間後に撤退した。ウクライナ政府によると、同原発内の機器などは破壊されたが、原発本体(廃炉済み)に被害はなかったとしている。