◎ザポリージャ原発を含むザポリージャ州の一部は親ロシア勢力の支配下に置かれている。
国際原子力機関(IAEA)は6日、ウクライナ南部ザポリージャ州の原発周辺における軍事行動を直ちに停止し、「核災害」を阻止するよう呼びかけた。
IAEAのグロッシ(Rafael Grossi)事務局長は欧州最大のザポリージャ原発が攻撃を受けたという報告に深刻な懸念を表明し、「核災害がのリスクが急速に高まっている」と警告した。
ウクライナ政府は5日、ロシア軍が同原発の施設を砲撃したと報告した。しかし、ロシア軍はこれを否定し、ウクライナ軍がミサイルを撃ち込んだと反論した。
同原発を含むザポリージャ州の一部は親ロシア勢力の支配下に置かれている。
親ロシア勢力は原発の運用をウクライナの技術者に任せているが、IAEAによると、技術者たちは安全運転に欠かせない定期点検や修理を行えていないという。
グロッシ氏は声明で、「5日の攻撃はウクライナと近隣諸国の公衆衛生や環境を脅かす可能性のある原子力災害のリスクを劇的に高めた」と強調した。
またグロッシ氏は原発に対する攻撃を直ちに停止し、原発本体が影響を受けなくても壊滅的な結果につながる可能性があると警告した。
ウクライナの原子力管理当局はロシアのザポリージャ州占領を正当化することになるという理由で、IAEAの原発査察を拒否している。
グロッシ氏はウクライナ政府に査察を認めるよう要請し、IAEAは必要な支援を提供できるとした。
ザポリージャ原発を運用する会社はロシアのミサイル攻撃で同原発に電力を供給する発電ユニット1機が破壊されたと報告している。放射能漏れは確認されていないとみられる。
ウクライナのゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領も原発に対する攻撃を「テロ行為」と非難している。
ロシアはウクライナ軍がミサイルを撃ち込んだと主張しているが、西側の専門家とEU高官はこの主張を否定した。
EUのボレル(Josep Borrell)外交安全保障上級代表は5日、原発周辺への攻撃を「ロシア軍の犯行」と明言し、糾弾した。「これは深刻かつ無責任な原子力安全規則違反であり、ロシアは国際規範を守らないということが改めて証明されました...」
ロシア軍はザポリージャ原発とその周辺を押さえている。同原発は加圧水型原子炉6基で構成され、放射性廃棄物を貯蔵している。
原発の対岸に位置する町の市民はAP通信の取材に対し、「ロシア軍は原発周辺からロケット弾を発射し、原発内に兵器を運び込んでいる」と証言した。
ゼレンスキー氏は5日のビデオ演説で原発に対する攻撃を非難し、ロシア軍を「恥知らずのテロ国家」と糾弾した。
西側の専門家や米国のシンクタンク「戦争研究所」によると、ロシア軍は原発周辺を要塞化し、ウクライナ軍を一方的に攻撃しているという。
英国防省は6日、ウクライナ軍は原発周辺に集まったロシア軍を攻撃できずにいると報告した。米国のブリンケン(Antony Blinken)国務長官は今週初め、ロシア軍がこの原発を「核の盾」として利用していると非難していた。
ザポリージャ州の一部を占領した親ロシア勢力は9月にロシア編入の是非を問う住民投票を行う予定だ。