◎北部のベラルーシ国境と首都キエフは300kmも離れていない。
2月10日、ロシアはウクライナと国境を接する同盟国ベラルーシで大規模な合同軍事演習を公式に開始した。NATO(北大西洋条約機構)はウクライナ東部だけでなく、北部の国境付近に集まったロシア軍にも警戒する必要がある。
ロシアは10日間の演習に先立ち、ここ数週間で前例のない規模の部隊と兵器をベラルーシに投入した。国営のチャンネル1によると、極東に配備されていた部隊は戦車、長距離砲、爆撃機などと共に現地入りしたという。
西側諸国はこの演習がウクライナに侵攻する隠れ蓑になる可能性があると懸念を表明している。北部の国境と首都キエフは300kmも離れていない。
しかし、ロシアとベラルーシは合同軍事演習を計画に基づくトレーニングの一環と主張し、ウクライナに侵攻する可能性を否定している。
ロシア国防省は10日、「両国はユニオン・リゾルブ2022(軍事演習の名称)で防衛、外部からの侵略、回避、撃退、テロとの戦いなどを再確認する」と述べた。
演習は2月20日に終了する予定で、ロシアによると、演習が終わり次第ロシア軍はベラルーシから撤退するという。
しかし、多くの軍事アナリストが演習に警鐘を鳴らし、ロシアはウクライナ東部、2014年に併合したクリミア半島、北部のベラルーシ国境付近に部隊を展開し、ウクライナを完全に取り囲んだと警告している。
AP通信のインタビューに応じた軍事アナリストによると、ロシアがベラルーシに配備した部隊の規模は冷戦時代よりはるかに大きく、高度な対空兵器や長距離ミサイルなど、国を征服するのに十分な兵力が揃っているという。
また衛星写真によると、ロシア軍の部隊の一部はウクライナ国境から数キロの地点に兵器を配備し、ロシア政府の公式声明に含まれていない地域で活動していることも明らかになった。
NATOのストルテンベルグ事務総長は10日、英ジョンソン首相との会談後の記者会見で、「現地のロシア軍は確実に増えている」と警告した。
ストルテンベルグ事務総長は「最悪の事態に備えつつ、外交による解決を模索し続けなければならない」と強調した。
一方、ウクライナ政府は北部で始まった演習を重要視しておらず、ロシアがベラルーシの領土から侵攻する可能性は低いと予想している。同国のレズニコフ国防相は今週、「北部の勢力は数千人と見積もられており、侵攻には不十分」と述べていた。
ロシアは今後10日間、ウクライナの北、東、南で前例のない規模の演習を行う予定である。
ベラルーシでの演習は、黒海に展開したロシア海軍の演習と重なる。ウクライナ政府は9日、「ロシアは海軍を黒海に展開し、海上を封鎖した」と非難した。
チャンネル1によると、水陸両用の揚陸艦を含む6隻のロシア軍艦は8日遅くに現地の艦隊と合流したという。ロシア海軍は2月13日~19日にかけて実弾射撃訓練を実施する予定である。
ウラジーミル・プーチン大統領はウクライナへの侵攻を否定しているが、西側諸国と激しく対立しているベラルーシへの部隊展開は不安をあおった。
ベラルーシの権威主義者であるアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は昨年、「領土内にロシアの核兵器を配備したい」と述べ、西側を強くけん制した。
一方、米国政府の高官は今週、「プーチン大統領はまだ侵攻を決断していない」と述べ、外交で危機を解決すると希望を表明した。
キングス・カレッジ・ロンドンの戦争学部のアナリストであるロブ・リー博士はABCニュースのインタビューの中で、「ベラルーシで予定されている演習はロシアが必要としている戦力を確保し、侵攻を計画しているのであれば、来週か再来週が最も理にかなっていると思う」と述べた。
米シンクタンクの戦略国際問題研究所の分析によると、ベラルーシには少なくとも14のロシア大隊、8,000~14,000人が配備された可能性があるという。米国防総省は軍事演習に参加する兵士を30,000人と見積もっている。
リー博士は軍事演習後に緊張が高まる可能性が高いと警告した。「最高のシナリオは軍事演習後に部隊を動かすことです。演習を終えた直後の部隊の士気と能力は非常に高く、侵攻の成功率を高めるでしょう...」
ロシアのラブロフ外相は9日、英外相と会談した後の記者会見で、「ロシアの戦車部隊は国境付近の雪がしめ固まるのを待っているのではないか」という記者の質問を笑い飛ばした。「ロシアは自国の領土と同盟国内で訓練を行っているだけです...」
ロシアとウクライナはフランスとドイツの提案を受け、ノルマンディー・フォーマット閣僚会合に参加する予定である。フランスとドイツはドンバス戦争の停戦協定ミンスクⅡ(2015年締結)を仲介した。