◎前線の戦況はほとんど明らかになっておらず、ウ軍とロ軍は全く異なる主張を展開している。
ウクライナのゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は10日、ロシアへの反転攻勢を開始したと初めて明言した。
ゼレンスキー氏はトルドー(Justin Trudeau)加首相との共同記者会見で、「反攻・防衛作戦が始まっている」と述べ、それ以上の詳細は明かさなかったものの、ウ軍の士気は高く、プーチン(Vladimir Putin)露大統領にそう伝えてほしいと記者団に語った。
ウ軍は東部ドネツク州や南部ヘルソン、ザポリージャ州などで攻撃を強化したと伝えられている。
しかし、前線の戦況はほとんど明らかになっておらず、ウ軍とロ軍は全く異なる主張を展開している。
ウ軍は前進、ロ軍は攻撃を防いだと主張しているが、その真偽を確かめることは不可能である。
プーチン氏は10日に公開されたビデオインタビューで、ウ軍は確かに攻撃を開始したが、多くの死傷者を出し、前進は失敗に終わったと主張した。
一方、ゼレンスキー氏は記者会見の中でプーチン氏の発言について記者から問われると、肩をすくめ、眉をひそめ、「そんな男は知らない」といったジェスチャーを示し、「ロシアはもう長くない」という見方を示した。
またゼレンスキー氏はウ軍司令官らの士気は高く、「プーチンにそう言ってやってくれ」と述べた。
事前の予告なくキーウを訪問したトルドー氏は、南部のカホフカダム決壊で被災した市民に哀悼の意を表し、1000万カナダドル相当の人道支援を提供すると表明。軍事支援については新たに5億カナダドル相当の兵器などを供与するとした。
またトルドー氏は、「カナダはウクライナの条件が整い次第、NATO加盟を支持する」とし、この問題は7月のリトアニアNATO首脳会議で議論されると強調した。
南部オデーサ州政府は同日、ロシア軍の攻撃で民間人少なくとも3人が死亡、数十人が負傷したと報告した。
それによると、撃墜したロ軍ドローンの破片がオデーサの住宅街に降り注ぎ、火災を引き起こしたという。
ウ軍参謀本部は直近24時間に東部で34件の武力衝突があったと報告。ロ軍は南部ザポリージャ州とヘルソン州で空爆などを行っているとした。負傷者の有無は明らかにしていない。
ウ空軍によると、オデーサへの攻撃は6時間ほど続き、ロ軍が発射したドローン35機中20機、様々な種類のミサイル8発のうち2発を撃墜したという。
ウ南部軍の報道官はSNSに声明を投稿。「空戦の結果、ドローン1機の破片が高層マンションに落下し、火災が発生した」と報告した。
地元当局によると、この火災で子供3人を含む27人が負傷し、火はまもなく消し止められたという。12人がマンションから救出された。
ソーシャルメディアで共有された動画にはオデーサの高層マンションと思われる建物が大きな被害を受けたところや、地面にできた大きなクレーターなどが映っていた。
キーウの東方約330kmキロに位置するポルタバの当局者は、市内の飛行場が10日早朝にロ軍の攻撃を受けたと報告している。攻撃には巡航ミサイルやドローンが使われたようだ。
東部ハルキウ州では民間人1人が死亡したと伝えられている。
一方、ロシア当局はザポリージャ州でここ数日戦闘が激化していると報告した。ウ軍はロ軍を分断するために、アゾフ海につながるルートの奪還を目指しているとみられる。
米シンクタンク戦争研究所はウ軍の南部反攻について、「先週のカホフカダム決壊による浸水がウ軍の進軍を阻む可能性がある」と指摘している。