◎事件から数時間後、容疑者の氏名がSNSで拡散。その後、現場近くにあるモスク周辺で暴動が発生し、暴徒と警察官が衝突した。
英イングランド北西部サウスポートの住宅地で発生した殺傷事件について、BBCは7月31日、女児3人を殺害し、10人に大怪我を負わせた17歳の少年が起訴されたと報じた。
事件は29日の正午前、リバプールの北方約20キロに位置するサウスポートのダンススクールで発生。米歌手テイラー・スウィフト(Taylor Swift)さんをテーマにしたイベントが開催されていた。
負傷した成人2人と子供8人のうち数人が重体である。
事件から数時間後、容疑者の氏名がSNSで拡散。その後、現場近くにあるモスク周辺で暴動が発生し、暴徒と警察官が衝突した。
BBCによると、SNSで拡散した氏名は偽物。17歳の少年が最近到着した移民であるという情報も虚偽であったという。
BBCを含む地元メディアは少年の両親をルワンダ出身と報じている。
ロンドン警視庁は「少年の氏名および最近到着した移民という情報は偽物である」と声明を出したが、偽情報は電光石火の速さで拡散、右派のインフルエンサーや移民排斥を訴える団体を煽り立てた。
BBCは偽情報を研究する専門家の話しとして、「それが偽情報であるか否かにかかわらず、多くのSNSユーザーがそれを拡散し、その一部は内容を信じる。偽情報を管理することは難しい」と伝えている。
内務省の報道官は30日、X(旧ツイッター)やフェイスブックで偽情報が拡散し、暴動に発展したことについて、「これらの企業は自社のコンテンツ内で広まった情報について、何らかの責任を負う必要がある」と指摘した。
サウスポートの議会事務所は声明で、「偽情報が拡散した結果、何百人もの人々が地域外からサウスポートに押し寄せ、問題を起こすつもりでいる」と非難。「彼らは偽情報を信じている、あるいは偽情報を拡散し、地域社会の分断を煽り、面白がっている悪意のある連中で構成される」と述べた。
少年の偽名を最初に報じたのはニュースメディアチャンネルを装ったXのアカウントであった。
同名のフェイスブックアカウントはパキスタンと米国のユーザーが運営している。
このメディアチャンネルは31日に声明を発表。「AI(人口知能)が作成したとみられる偽ニュース記事や動画がSNSで拡散し、サウスポートに関する偽記事が誤解を招いた」と謝罪した。
この謝罪文が掲載されるまでの間、この偽記事は数百万回閲覧されていた。
イギリスを含む世界各国はオンライン上で拡散する偽情報の抑制に苦慮している。
偽情報を発信したXユーザーはより多くの閲覧といいねを得たいがために、注目が集まっているサウスポートの事件の偽情報を拡散したとみられる。
その偽情報は移民排斥を訴える右派によってさらに拡散された。