イギリス政府、年金受給者に対する冬季燃料手当を復活、反発受け方針転換

昨年7月に発足したスターマー政権は前保守政権が残した財政の穴を埋めるために、より広範な歳出削減の一環として、イングランドとウェールズの最貧層を除くすべての年金受給者に対する冬季燃料手当を削減した。
2025年6月9日/イギリス、ロンドン、スターマー首相(左)とNATOのルッテ事務総長(NATO/AP通信)

イギリスのスターマー(Keir Starmer)首相が9日、年金受給者に対する補助金を削減するという決定を覆した。

この決定は労働者と年金受給者の反発を招き、与党・労働党の支持率を押し下げた。この見直しにより、この冬、何百万人もの高齢者に冬季の燃料補助金が支給されることが決まった。

昨年7月に発足したスターマー政権は前保守政権が残した財政の穴を埋めるために、より広範な歳出削減の一環として、イングランドとウェールズの最貧層を除くすべての年金受給者に対する冬季燃料手当を削減した。

首相府の方針転換により、約900万人の年金生活者に冬季の暖房費として200~300ポンドの補助金が支給される。年収が3万5000ポンド(約680万円)を超える約200万人は対象外である。

財務省はこの削減を擁護しながらも、数十人の労働党議員からの反対に直面。専門家はこの削減が反移民を公約に掲げる新興右派政党「リフォームUK」を後押ししたと指摘している。

リフォームUKは先月初めの地方選で初めて地方議会の過半数を確保。さらに、初めて2つの首長ポストも獲得した。

地元メディアの世論調査によると、リフォームUKの支持率は労働党と最大野党・保守党を上回っている。

首相府は今回の方針転換について、「富裕層の年金受給者を支給対象から除外することは正しい」とし、昨年の決定を擁護した。

補助金の総支給額は約12億5000万ポンド(約2450億円)。政府はこれを来年以降も続ける予定としている。

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