イギリス、EUの学生交流プログラムに再参加へ
再加盟はブレグジット後の関係改善や若者の教育・人的交流機会の拡大を狙った重要な一歩とされる。
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イギリス政府は17日、EUの学生交流プログラム「エラスムス・プラス(Erasmus+)」に2027年1月から再加盟することでEU側と合意したと発表した。
イギリスは2020年にEUを離脱、このプログラムからも外れていた。
再加盟はブレグジット後の関係改善や若者の教育・人的交流機会の拡大を狙った重要な一歩とされる。
エラスムスは約40年にわたりEU圏内の大学生や若者に学びや訓練の機会を提供してきた交流プログラムであり、加盟国の学生が他国で学業やインターンシップを行う際に追加の留学費用が不要となる仕組みだ。
イギリスは2021年1月にこのプログラムから離脱し、代わりに世界を対象とする独自の制度を導入していたが、今回の再加盟合意によりイギリスの学生はEU加盟国で再び学ぶ機会を得ることになる。
イギリス政府は初年度の2027/28年度におけるエラスムスへの参加費として約5億7000万ポンド(約1187億円)を支払うことで合意した。この金額には交渉の結果として30%の割引が適用されており、将来の拠出額については今後EU側と協議を続ける方針としている。イギリス側はこの財政条件が「貢献と利益の公正なバランス」を示すものだと説明している。
再加盟後は大学生だけでなく、職業教育の受講者や見習い、成人学習者、学校の生徒、教育者、スポーツ指導者らも対象となる。政府は特に教育機関や若者に広く機会を提供し、10万人以上が初年度に恩恵を受ける可能性があると見込んでいる。これによってイギリスとEU加盟国の人的交流が活性化し、国際的なキャリア構築や文化理解の深化につながるとの期待が示されている。
イギリス国内ではエラスムス再加盟が若者にとって大きな「勝利」であるとの評価が出ている一方で、ブレグジットによって失われた広範囲な移動自由や経済的結びつきの回復には限定的との指摘もある。また、イギリスの教育制度をどう位置づけるかについては、教育界でも意見が分かれているが、エラスムスへの復帰自体は長年の要望だったと受け止められている。
今回の合意はスターマー政権が掲げる「EUとの関係改善」政策の一環でもある。スターマー(Keir Starmer)首相はブレグジット後の経済や人的交流の強化を目指し、2025年5月の英・EUサミットで戦略的パートナーシップ強化を打ち出していた。その後の交渉でエネルギー市場統合や食品・飲料貿易協定、炭素市場の連携に向けた協議も進められており、エラスムスへの再加盟は包括的な関係改善の象徴的成果として位置づけられている。
一方、EU側からも再加盟は歓迎されており、EU関係者は人的交流は「人と人との絆」を強める重要な要素だとして、イギリスとの未来志向の協力関係を強調している。イギリスとEUが長引く対立を乗り越え、教育・文化面での協力基盤を再構築する契機になるとの見方が広がっている。
