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イギリス政府、純移民数の急減を歓迎「さらなる対策が必要」

国家統計局(ONS)によると、24年7月から25年6月までの純移民数は前年度の約64万9000人から69%減の約20万4000人となり、過去4年で最も少なくなった。
2025年11月26日/イギリス、ロンドンの首相官邸前、マフムード内相(AP通信)

イギリス政府は27日、2025年6月までの1年間における純移民(移住した人数から出国した人数を差し引いた数)が著しく減少したとの報告を歓迎する一方で、さらなる削減が必要だとの認識を示した。

国家統計局(ONS)によると、24年7月から25年6月までの純移民数は前年度の約64万9000人から69%減の約20万4000人となり、過去4年で最も少なくなった。

減少の主な背景として、EU圏外からの労働や留学目的の移民が大幅に減少したこと、さらにイギリスから他国へ出国する人が増加したことが挙げられている。特に、非EU圏からの移民数が大きく減った。

一方で、依然として不法入国者や難民申請者の英仏海峡横断を巡る懸念は根強く、イギリス国内では移民問題が政治・社会の重要課題となっている。

今回の減少がそうした懸念全てを払拭するには不十分と政府も認めている。

スターマー政権は前保守政権の移民規制強化策を引き継ぎ、さらに移民管理を強化する方針を示している。たとえば、介護労働者を対象とした海外からの採用を停止したことや、高度技能労働者のビザに必要な年収条件を見直し、条件を引き上げたことなどが挙げられる。

これらの措置が今回の大幅な純移民減少につながったとの見方がある。

ただし、純移民の減少が経済や公共サービス、住宅供給などに与える影響に注意を促す声もある。労働力や技能を持った移民が減ることは、一方で経済成長や建設、医療・介護などに必要な人材確保に影を落とす可能性があるためだ。今後、移民管理と国の経済・社会政策とのバランスをどう取るかが大きな課題となる。

政府は今回の数字を成果の一つとみなすが、それでも「地域社会への圧力を軽減するにはなお道半ば」とし、さらなる対応を示唆している。

今後は不法移民対策の強化や難民申請制度の見直しなど、制度的な改革と実務的な運用改善が問われることになるだろう。

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