セルビア首都で反政府デモ、一部が暴徒化、負傷者も

暴動は28日午後に勃発し、明け方まで続いたという。
2025年6月28日/セルビア、首都ベオグラード、デモ参加者を取り押さえる警察官(AP通信)

セルビアの首都ベオグラードで29日、ブチッチ政権に抗議するデモが2日連続で行われ、一部の暴徒と警察が衝突した。

現地メディアによると、暴動は28日午後に勃発し、明け方まで続いたという。

デモ隊はベオグラードの各地に金属製のフェンスやごみ箱を設置し、複数の幹線道路を封鎖。北部ノビサドでは抗議者が与党・セルビア進歩党(SNS)の事務所に卵を投げつけた。

警察は29日の声明で、48人の警察官が負傷し、22人の抗議者が病院に搬送されたと述べた。

内務省は28日夜から29日未明にかけて77人が逮捕され、29日朝の時点で38人が拘束されたままとなっており、そのほとんどが起訴される予定であると明らかにした。

28日の集会は平和的に終了し、その後、一部が暴徒化した。暴徒は機動隊に石や瓶などを投げつけ、機動隊は催涙スプレーと警棒で応戦した。

検察当局は28日の声明で、少なくとも8人が公務執行妨害などの容疑で拘束されたと述べていた。

セルビアではノビサド駅の事故以来、政府に抗議するデモが全国各地で行われている。

この事故はノビサド駅の入り口で24年11月1日に発生。コンクリート製の天井が突然崩落し、6歳の少女を含む16人が死亡した。

ノビサド駅は1964年に建設され、近年2度改修工事が行われたものの、崩落した天井は工事に含まれていなかった。直近の工事は中国の国営企業が請け負っていた。

このデモは各地の学生ユニオンが主催。多くの学生が講義をボイコットし、政府に説明を求めるため、デモに参加している。

この結果、国内のほぼ全ての大学が閉鎖される事態となった。

ブチッチ氏は全国の大学に授業の再開と、デモに参加した大学関係者を解雇するよう要求している。

ブチッチ政権は2027年に任期満了を迎える。同年には議会選挙も予定されている。

野党はブチッチ政権が組織犯罪とつながり、対立勢力への暴力やメディア規制を推進していると主張。与党はこれを否定し、野党が国家転覆を企てていると主張している。

デモ隊は非暴力を誓い、参加者に平和的に抗議するよう呼びかけてきた。

セルビアのメディアは他の都市でも逮捕者が出たと報じている。

29日の明け方に暴動が収束した後、デモを主催する学生ユニオンが声明を出し、警察に逮捕した市民を釈放するよう要求した。

デモ隊は汚職、怠慢、安全規制の無視が横行した結果、ノビサド駅の改修がおろそかになったと主張し、ブチッチ氏に責任を取るよう求めてきた。

これに対しブチッチ氏は学生や大学教授たちが西側諸国と連携して国家転覆を企てていると主張している。

セルビアはEU加盟を目指す一方、中国やロシアとの関係を強化し、西側の対ロシア制裁にも参加していない。

政府与党は過去の抗議デモを鎮めることに成功してきたが、現在の学生運動は農業組合、教職員、看護士、弁護士、医師、裁判官、俳優など、あらゆる階層から広く支持を集めており、収まるどころか勢いを増しているように見える。

検察は昨年末、駅崩落に関連してベシッチ(Goran Vesic)前建設相を含む13人を起訴した。13人は公共の安全に対する重大な犯罪行為と公共工事で不誠実な対応をした罪に問われている。有罪が確定すれば、12年以下の懲役刑に処される可能性がある。

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