SHARE:

スロバキア首都で野党集会、政府の緊縮政策と親ロシア政策に抗議

スロバキアは財政健全化と経済成長のバランスを取るための重要な局面にある。
2025年9月16日/スロバキア、首都プラチスラバ、政府与党に抗議する集会(AP通信)

スロバキアの首都プラチスラバで16日、フィツォ(Robert Fico)首相に抗議する野党集会が行われ、数千人が参加した。

デモ隊はフィツォ政権の緊縮財政と親ロシア政策に抗議した。

現地メディアによると、プラチスラバを含む少なくとも16の都市で同様の集会やデモ行進が行われたという。

フィツォ氏は今月初め、中国・北京で開催された抗日戦争勝利80年を記念する軍事パレードの合間にロシアのプーチン(Vladimir Putin)大統領と会談。ロシアとの関係正常化を望んでいると表明した。

EU加盟国の中でこの式典に参加したのはフィツォ氏のみであった。

デモ隊はこの訪問と政府が最近閣議決定した緊縮政策パッケージを非難した。

政府は財政赤字を削減するためにこれらの措置が必要だと主張している。財政赤字は今年、GDP比で5%を超え、EUが求める上限3%を突破する見通しだ。

政府が求める措置には医療・社会保険料の引き上げ、高所得者層の所得税引き上げ、一部食品への付加価値税(VAT)導入、祝日の削減などが含まれる。

労働組合などの反対派は「一般市民が最も打撃を受ける」と主張。企業側は「景気刺激策が全く盛り込まれていない」と不満を表明している。

スロバキアは中央ヨーロッパに位置するEU加盟国であり、近年、財政健全化と経済成長のバランスを取ることに注力している。25年時点の財政と経済状況は財政赤字の縮小、税制改革、消費者信頼感の低下、そして社会的対立の高まりといった要素が絡み合っている。


財政状況と政策動向

スロバキア政府は財政健全化を最優先課題と位置づけている。具体的には、25年の財政赤字を国内総生産(GDP)比で4.7%に抑えることを目指し、27年までにEUの財政規律基準である3%を達成する方針を示した。このため、政府は増税や支出削減を含む総額27億ユーロの財政再建策を導入した。主な措置として、甘味飲料やタバコ製品への新たな課税が挙げられ、25年には約1億ユーロ、26年には2.43億ユーロの歳入増加が見込まれている。

しかし、これらの緊縮策は国民の反発を招き、16日にはブラチスラバを含む16都市で数千人規模の抗議デモが発生した。デモ参加者は、増税や社会保険料の引き上げ、食品の付加価値税(VAT)の増税、国民の祝日の削減などの措置に反対し、政府の親ロシア的な外交姿勢にも批判の声を上げた。


経済成長と消費者信頼感

スロバキアの2025年第2四半期の国内総生産(GDP)は前期比0.20%の成長を記録し、年間成長率は約2.6%と予測されている。これは、EU平均を上回る成長率であり、個人消費が主な成長の原動力となっている。

一方で、消費者信頼感は25年8月にー24.4と、2023年3月以来の最低水準に低下した。これは、家計の財政状況に対する悲観的な見通しや失業への懸念の高まりが主な要因とされている。特に、増税や社会保障制度の変更が家計に与える影響が不安視されている。


外部要因と国際関係

スロバキアは欧州中央銀行(ECB)の金融政策の影響を受けており、25年9月のECB理事会では、インフレ率が目標を下回るリスクがない限り、追加の利下げは行わないとの見解が示された。これは、スロバキア経済の安定性を維持するための重要な要素となっている。

また、米国の関税措置がスロバキア進出系企業に影響を及ぼしており、約6割の企業が「影響は限定的である」と回答している一方で、自動車関連企業の約3割が「ある程度影響がある」と認識している。これらの影響は、スロバキアの製造業や輸出業にとって重要な課題となっている。


社会的対立と政治的緊張

スロバキア政治は親ロシア的な立場を取るフィツォ氏の政府によって主導されており、EUや西側諸国との関係において緊張が高まっている。25年9月にはフィツォ氏が中国を訪問し、ロシアのプーチン氏と会談、国内外で批判の声が上がった。

さらに、24年にはフィツォ氏の暗殺未遂事件が発生し、政治的分断が社会に波及していることが明らかとなった。これらの事態は、スロバキアの民主主義と社会的安定に対する懸念を引き起こしている。


結論

スロバキアは財政健全化と経済成長のバランスを取るための重要な局面にある。増税や支出削減といった緊縮策は、短期的な経済成長を抑制する可能性がある一方で、長期的な財政健全化には必要不可欠とされている。しかし、これらの政策が国民生活に与える影響や、政治的対立の激化が社会的安定に及ぼす影響については、慎重な対応が求められる。スロバキア政府はEUの財政規律を遵守しつつ、国民の信頼を回復するための包括的な政策を策定する必要がある。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします