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スロバキア首都で反政府集会、数千人が参加

デモ隊はフィツォ氏が訪問先の中国・北京でロシアのプーチン大統領と会談したことを非難。「恥を知れ」と連呼した。
2025年9月11日/スロバキア、首都プラチスラバ、政府与党に抗議する集会(AP通信)

スロバキアの首都プラチスラバで11日、フィツォ(Robert Fico)首相に抗議する抗議デモが行われ、数千人が参加した。

デモ隊はフィツォ氏が訪問先の中国・北京でロシアのプーチン(Vladimir Putin)大統領と会談したことを非難。「恥を知れ」と連呼した。

フィツォ氏は先週、北京で開催された抗日戦争勝利80年を記念する軍事パレードの合間にプーチン氏と会談。ロシアとの関係正常化を望んでいると表明した。

EU加盟国の中でこの式典に参加したのはフィツォ氏のみであった。

スロバキアは2028年1月1日までにロシア産天然ガスの輸入を段階的に廃止するというEUの提案に関する懸念が解消されるまで、最新のエネルギー制裁を承認しないと主張してきた。

EUはロシアによるウクライナ侵略を受け、ロシア産エネルギーの輸入量を段階的に減らし、最終的にゼロにすることを目標としている。

デモ隊は「恥を知れ、恥を知れ」と連呼し、フィツォ氏に退陣を要求した。

スロバキアの人権状況はEUおよびNATO加盟国として一定の民主的基盤と法制度を備えている一方で、いくつかの課題を抱えているのが現状である。

憲法上は基本的人権や自由が保障され、表現の自由、集会の自由、信教の自由、選挙権などが制度的に認められている。司法制度も形式的には独立しており、欧州人権条約や国際人権規約を批准しているため、国際基準に沿った権利保護の枠組みは整っている。しかし実際の運用面では、少数民族や社会的弱者に対する差別や不平等が依然として存在している。

特に深刻なのはロマ(いわゆるジプシー)に対する社会的排除と差別である。ロマは人口の約8〜9%を占めるとされるが、教育、雇用、住宅、医療などあらゆる分野で不利な立場に置かれている。多くのロマ集落はインフラが未整備で、上下水道や電気へのアクセスが限定される場合がある。教育においてはロマの子どもが特殊学級に不当に振り分けられる例も報告され、社会的分断を固定化する要因となっている。これに対し政府やEUは統合政策を進めているものの、実効性は限定的である。

また、表現や報道の自由は基本的に保障されているが、政治的圧力やメディア所有の集中が問題視されている。特にジャーナリストに対する脅迫や暴力は国際社会から懸念を持たれており、2018年には調査報道記者ヤン・クツィアク氏とその婚約者が殺害される事件が発生した。この事件は政界と企業の癒着や腐敗を浮き彫りにし、国内外に衝撃を与えた。その後、市民の抗議行動や国際的な批判を受け、政府は透明性や司法の独立性を強化する方向へ一定の改革を進めたが、腐敗や権力の濫用に対する警戒は続いている。

移民や性的少数者に対する人権状況も課題である。スロバキアは比較的移民が少ない国だが、難民受け入れに消極的であり、国民感情としても排他的傾向が強い。LGBTQ+の権利については法的保護が十分ではなく、同性婚やパートナーシップ制度は認められていない。社会的にも保守的な価値観が根強く、差別や偏見が存在する。近年はプライドイベントが開催されるなど市民社会の動きもあるが、政治的支援は限定的である。

一方で、スロバキアは市民社会や非政府組織の活動が比較的活発で、人権問題を監視・改善するための取り組みが進められている。EUや国際機関からの圧力や支援もあり、制度面では漸進的な改善が期待されている。

スロバキアの人権状況は形式的には国際基準に沿った保障を整えながらも、少数民族、報道の自由、腐敗防止、LGBTQ+の権利といった領域で依然課題を残す状況にあるといえる。

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