スロバキア全土で反政府デモ、汚職告発者保護機関の廃止案に抗議
首都ブラチスラバをはじめとする10以上の都市で市民が街頭に繰り出し、政府の政策に強い不満を示した。
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スロバキアで16日、フィツォ(Robert Fico)首相率いる政府の汚職告発者保護機関の廃止と刑法改正案に反対する大規模な抗議デモが国内各地で行われ、数千人が参加した。
現地メディアによると、首都ブラチスラバをはじめとする10以上の都市で市民が街頭に繰り出し、政府の政策に強い不満を示したという。
ブラチスラバでは「辞任せよ」「恥を知れ」といったシュプレヒコールや横断幕が掲げられ、政府に対する不満を露わにした。特に注目を集めたのは、独立性を持つ汚職告発者(ウィッスルブロワー)保護機関の廃止計画と証人(いわゆる「クラウン・ウィットネス」)の証言取り扱いを制限する刑法改正案への反発である。
フィツォ政権は汚職告発制度について「政治的に悪用されている」として見直しを進めているが、野党や市民団体はこれを強く批判し、汚職追及の抑制や権力者の保護につながると警戒している。
今回の改正案では捜査に協力した被疑者が別の事件で虚偽の供述をした場合、その協力に基づく証拠の使用を全面的に禁止する規定が盛り込まれ、これが「犯罪者を助ける」ものだとして批判が高まっている。
抗議デモを組織した最大野党「プログレッシブ・スロバキア(PS)」の党首は演説で、「スロバキアは犯罪者とマフィアを利する法律を承認する唯一の国になっている」と政府を厳しく非難した。
デモ隊はペレグリニ(Peter Pellegrini)大統領に対し法案に拒否権を行使するよう求めた。ペレグリニ氏はフィツォ氏と同じ政治勢力に属しながらも、汚職告発機関の廃止や急速な法改正については批判的であり、EUの懸念も踏まえて慎重な対応を訴えている。しかし、与党連合は国会で多数を占めており、大統領の拒否権を覆す可能性も指摘されている。
参加者の中には「フィツォ政権はマフィアを助けている」と書かれたプラカードを掲げたり、EU旗を手に「法の支配を守れ」と訴える若者たちも見られ、抗議は司法制度に対する信頼低下と民主主義への危機感を背景に広がっている。
フィツォ氏はこれまで、報道機関の再編や他の刑法改正などを進めてきたが、国内外から「権力の集中」「民主主義の後退」との批判が出ている。特にEUの執行部は告発者保護制度の廃止がEU法や汚職対策に悪影響を及ぼす可能性があるとして懸念を表明している。これに対し政府は、関係者と十分協議したと反論しており、対立は収まっていない。
今回の抗議デモはフィツォ政権に対する市民の強い反発と、法制度の方向性をめぐる世論の分断を露呈するものとなった。政局の先行きや、これらの法案が最終的にどのような形で成立するかは不透明であり、国内外の注目が集まっている。
