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新START失効、米露間の最後の核合意がまもなく期限切れに

条約失効に関してロシア側は、同条約の数量制限を期限後も自主的に守る意思を表明しているものの、米側の公式な同意は得られていない。
トランプ米大統領(左)とプーチン露大統領(Getty Images/AFP通信)

米国とロシアの間で残る最後の核兵器制限条約「戦略兵器削減条約(新START)」が2月5日に失効する見込みとなり、両国間で50年以上続いてきた核軍縮の枠組みが事実上崩壊する。新STARTは2010年に署名され、戦略核弾頭や発射システムの上限を設けるとともに相互査察を義務付けたもので、世界最大の核保有国同士の軍縮の柱として機能してきたが、今年期限切れを迎えることで核兵器管理の法的制約が消滅する。

条約は元々2021年までの期限であったが延長され、両国はこれまで上限として1550基の配備済み核弾頭と700の配備システムを維持していた。しかし検査・査察制度は新型コロナウイルスの影響を受けて中断され、その後も再開に至らないまま関係悪化が続いた。2013年以降のロシアによるウクライナ侵攻や西側との緊張激化もあり、軍縮交渉は進展しなかった。

条約失効に関してロシア側は、同条約の数量制限を期限後も自主的に守る意思を表明しているものの、米側の公式な同意は得られていない。ロシアのリャプコフ(Sergei Ryabkov)外務次官は米国が期限延長提案に応じなかったとして「新たな現実への備えができている」と述べ、条約失効は不可避との姿勢を示した。

軍縮専門家や国際社会の一部では、条約の失効が新たな核競争を招くとの懸念が強まっている。核軍縮団体「アームズ・コントロール・アソシエーション」は、条約が無効になることで米露双方が核弾頭数を増やす可能性が出てくると警告し、さらに中国の急速な核能力増強を含む「制約のない危険な三つ巴の軍拡競争」が起こり得ると指摘した。

また、戦略・軍事専門家の間では、条約失効が核兵器の透明性低下や誤算のリスクを高めるとの懸念も示されている。長年にわたり新STARTは査察やデータ交換を通じて信頼構築の役割を果たしてきたが、その仕組みが失われると情報の非対称性が増し、意図しない軍事的対立が起きる危険があるとの分析もある。

一方、米国のトランプ政権高官は条約を単純に延長するのではなく、中国を含めた多国間の軍縮交渉を模索する意向を示しているが、具体的な枠組みは未整備のままだ。中国政府は自国の核戦力拡大に伴う制限には消極的で、既存の米露間の枠組みに参加する姿勢を示していない。

新STARTは米ソ時代のSALTやINF(中距離核戦力)条約に連なる核軍縮の歴史的な枠組みの一つであり、条約の期限切れは冷戦時代から続いた大国間の軍縮努力の節目となる。条約失効後、各国がどのような核戦略を採るかは不透明で、国際安全保障環境は一段と厳しいものとなる可能性があるとの見方が出ている。

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