セルビア暴動、反体制派と機動隊が衝突、与党事務所に放火も

セルビアでは北部ノビサド駅の事故以来、政府に抗議するデモが全国各地で行われている。
2025年8月16日/セルビア、首都ベオグラード、暴動に備える機動隊員(AP通信)

セルビア西部と首都ベオグラードで16日、ブチッチ(Aleksandar Vucic)大統領に抗議するデモが暴動に発展し、怒れる数百人の市民が警察と衝突した。

顔にバンダナを巻き、ブチッチ政権への反対スローガンを叫ぶ若者たちはベオグラード近郊の町にある与党・セルビア進歩党(SNS)の事務所に突撃し、火を放った後、機動隊と衝突した。

機動隊は催涙ガスを複数回発射し、瓶や石、信号弾を投げつけるデモ参加者に突撃した。

同様の衝突は17日未明、北部ノビサドとベオグラードでも発生。警察はデモ隊が車やゴミ箱に火を放つ中、催涙ガスを放ちながら暴徒と対峙した。

ベオグラードの複数の地区で警察の取り締まりに抗議するデモが行われ、警察署、検察庁、市役所が標的となった。

現地メディアによると、これらの施設で破壊行為と略奪が確認されたという。市役所では火事が発生したという情報もある。

内務省は声明で、「少なくとも1人の警察官が負傷し、現在までに18人が拘束された」と明らかにした。

デモを主催する複数の学生ユニオンも声明を出し、ブチッチ政権に降伏するよう呼びかけた。

ある学生グループは警察官と軍兵士に武器を持ってデモに参加するよう促している。

セルビアではノビサド駅の事故以来、政府に抗議するデモが全国各地で行われている。

この事故はノビサド駅の入り口で24年11月1日に発生。コンクリート製の天井が突然崩落し、6歳の少女を含む16人が死亡した。

ノビサド駅は1964年に建設され、近年2度改修工事が行われたものの、崩落した天井は工事に含まれていなかった。直近の工事は中国の国営企業が請け負っていた。

親ロシア派のブチッチ氏は16日夜、デモ参加者が外国政府の命を受け、セルビアを破壊しようとしていると主張。デモに参加する市民を「叩き潰す」と誓った。

ベオグラードの抗議デモは4日連続で暴動に発展。機動隊の取り締まりにより数十人が負傷、数百人が逮捕された。

SNSでは機動隊の暴力的な取り締まりへの批判が殺到している。

親ブチッチ派と反体制派との衝突も各地で確認され、地元メディアによると、ベオグラードでは16日夜に車が群衆に突っ込んだという。ケガ人の情報はない。

欧州評議会は16日の声明で、セルビア政府に対し、平和的な集会の権利を保証するよう求め、市民にも冷静に行動するよう呼びかけた。

国家警察は残虐行為の報告を否定し、暴動により数十人の警察官が負傷したと非難した。

ソーシャルメディアで共有された動画には警棒で市民を殴る警察官や、地面に押し倒した女性を踏みつける男の姿が映っていた。被害者の多くが若者と女性であった。

このデモは各地の学生ユニオンが主催。多くの学生が講義をボイコットし、政府に説明を求めるため、デモに参加している。

この結果、国内のほぼ全ての大学が閉鎖される事態となった。

ブチッチ氏は全国の大学に授業の再開と、デモに参加した大学関係者を解雇するよう要求している。

野党はブチッチ政権が犯罪組織と連携して対立勢力への暴力やメディア規制を推進していると主張。与党はこれを否定し、野党が国家転覆を企てていると主張している。

デモ隊は非暴力を誓い、参加者に平和的に抗議するよう呼びかけてきたが、6月末に一部が暴徒化し、数百人が逮捕される事態となった。

デモ隊は汚職、怠慢、安全規制の無視が横行した結果、ノビサド駅の改修がおろそかになったと主張し、ブチッチ氏に責任を取るよう求めてきた。

政府与党は過去の抗議デモを鎮めることに成功してきたが、現在の学生運動は農業組合、教職員、看護士、弁護士、医師、裁判官、俳優など、あらゆる階層から広く支持を集めており、収まるどころか勢いを増しているように見える。

捜査当局は今月初め、この崩落事故に関連して元大臣を含む6人を逮捕したと明らかにした。

検察は6人が中国企業に請求書(工事費)を水増しして提出するよう求め、国に1.15億ドル(約168億円)の損害を与えた疑いがあると指摘している。

中国企業は請求書を水増しすることで1880万ドル(約27.6億円)の利益を得たとされるが、詳細は明らかになっていない。

検察は昨年末、この事故に関連してベシッチ(Goran Vesic)前建設相を含む13人を起訴した。13人は公共の安全に対する重大な犯罪行為と公共工事で不誠実な対応をした罪に問われている。有罪が確定すれば、12年以下の懲役刑に処される可能性がある。

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