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セルビア全土で反政府デモ、数万人がブチッチ政権に抗議

セルビアでは北部ノビサドの駅での事故以来、政府に抗議するデモが全国各地で続いている。
2025年9月1日/セルビア、首都ベオグラード、ブチッチ政権に抗議するデモ(AP通信)

セルビア各地で1日、ブチッチ政権に抗議するデモ行進や集会が開かれ、数万人が参加した。

首都ベオグラードの大統領府とその周辺には親政府派が陣取り、機動隊と共に反体制派の襲撃に備えた。

セルビアでは北部ノビサドの駅での事故以来、政府に抗議するデモが全国各地で続いている。

この事故はノビサド駅の入り口で24年11月1日に発生。コンクリート製の天井が突然崩落し、6歳の少女を含む16人が死亡した。

ノビサド駅は1964年に建設され、近年2度改修工事が行われたものの、崩落した天井は工事に含まれていなかった。直近の工事は中国の国営企業が請け負っていた。

デモ隊はこの事故以来、毎月1日に市内を行進したり、集会を開いてブチッチ(Aleksandar Vucic)大統領に抗議してきた。

現地メディアによると、1日のデモはベオグラードやノビサドなど、全国の主要都市で行われたという。

ノビサドでは機動隊が市内を行進していた市民に飛びかかり、数人が軽傷を負った。逮捕者の情報はない。

ベオグラード中心部の公園には親政府派がキャンプを設置し、警察がその周囲に非常線を張っている。

デモ隊はブチッチ政権が支持者を「人間の盾」にしていると非難している。

このデモは各地の学生ユニオンが主催。多くの学生が講義をボイコットし、政府に説明を求めるため、デモに参加している。

この結果、国内のほぼ全ての大学が閉鎖される事態となった。

ブチッチ氏は全国の大学に授業の再開と、デモに参加した大学関係者を解雇するよう要求。その結果、100人以上の大学教授が解雇され、ブチッチ派に取って代わられた。

野党はブチッチ政権が犯罪組織と連携して対立勢力への暴力やメディア規制を推進していると主張。与党はこれを否定し、野党が国家転覆を企てていると主張している。

デモ隊は非暴力を誓い、参加者に平和的に抗議するよう呼びかけてきたが、6月末に一部が暴徒化し、数百人が逮捕される事態となった。

デモ隊は汚職、怠慢、安全規制の無視が横行した結果、ノビサド駅の改修がおろそかになったと主張し、ブチッチ氏に責任を取るよう求めてきた。

政府与党は過去の抗議デモを鎮めることに成功してきたが、現在の学生運動は農業組合、教職員、看護士、弁護士、医師、裁判官、俳優など、あらゆる階層から広く支持を集めており、収まるどころか勢いを増しているように見える。

捜査当局は先月初め、ノビサドの崩落事故に関連して元大臣を含む6人を逮捕したと明らかにした。

検察は6人が中国企業に請求書(工事費)を水増しして提出するよう求め、国に1.15億ドル(約169億円)の損害を与えた疑いがあると指摘している。

中国企業は請求書を水増しすることで1880万ドル(約27.7億円)の利益を得たとされるが、詳細は明らかになっていない。

検察は昨年末、この事故に関連してベシッチ(Goran Vesic)前建設相を含む13人を起訴した。13人は公共の安全に対する重大な犯罪行為と公共工事で不誠実な対応をした罪に問われている。有罪が確定すれば、12年以下の懲役刑に処される可能性がある。

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