◎スイス国民はまもなく合成農薬の使用を禁止するかどうかを決める国民投票に投票する予定であり、承認されれば世界で2カ国目の合成農薬使用禁止国になる。
スイス連邦の農場(Benjamin Sz-J./Pixabay)

スイス国民はまもなく合成農薬の使用を禁止するかどうかを決める国民投票に投票する予定であり、承認されれば世界で2カ国目の合成農薬使用禁止国になる。

法案が承認されれば、農薬を使用する農家に支払われていた補助金は廃止される。また別の法案は、「10年以内に合成農薬の使用を一切禁止する」と提案している。

法案の支持者は、合成農薬は人間、植物、動物、昆虫に影響を与えると指摘している。

一方、合成農薬を使用する農家は、「法案はスイスの農業を荒廃させる」と警告している。

農薬は農作物につく害虫を効率的に駆除する薬剤であり、農業を生業とする世帯や大規模農家に必要不可欠なツールになった。

6月13日の国民投票では、テロ対策法案、化石燃料に対する新しい税金の導入、コロナ関連の緊急資金拠出法案などの是非も問われる。

スイスの憲法は国民に強い発言権を与えており、国民投票で様々な問題を処理してきた。2009年12月の国民投票ではモスクの塔(ミナレット)の新設を禁止する提案が承認され、イスラム教団体が欧州人権裁判所に異議を申し立てている。なお、政府はこの提案に強く反対していた。

この法案はスイスに本拠を置く世界最大の農薬メーカー、シンジェンタ社にも影響を与える可能性があると伝えられている。同社は世界に支社を展開する多国籍企業兼、スイスを代表する企業のひとつである。

首都ジュネーブ在住のマリー・レンバウス氏はAFP通信の取材に対し、「農薬は私たちの健康を損ないます」と語った。「わたしは賛成に投票します。スイスの未来を守るために、合成農薬の使用は禁止しなければなりません...」

現地メディアによると、若い世代はおおむね農薬の禁止を支持している可能性が高いという。

しかし、国内の農作物の大半を生産している農家は、すでにヨーロッパで最も厳しい規則を順守していると主張する。スイスの農業は確実に衰退しており、今回の農薬禁止法案は農家を激怒させた。

チューリッヒ・ファーマーズ・アソシエーションのマーティン・ハーブ会長は英BBCニュースの取材に対し、「特に都市部で生活している人は農業を理解していない」と述べた。「彼らは窓の外でトマトを栽培することが農業だと思っています...」

スイスの農業団体は非常に強力であり、最新の世論調査によると、法案は廃案になる可能性が高いという。しかし、この議論は一度廃案になっても必ず再燃すると信じられている。

ある農家はソーシャルメディアに、「合成農薬の使用が禁止されれば、撤退せざるを得ない」と投稿した。「害虫と戦うためには農薬が必要不可欠です。農業を知らない人はピンセットで1匹ずつ害虫を駆除しなさいと言います。私たちにはそれを実行する時間と体力とお金がありません」

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