◎3月7日、スイスで国民投票が行われ、「公共の場で顔を覆うことを禁止する提案」が承認された。対象はイスラム教徒の女性が着用するニカーブとブルカ、主に抗議者が使用するスキーマスクとバンダナ。
3月7日、スイスで国民投票が行われ、「公共の場で顔を覆うことを禁止する提案」が承認された。対象はイスラム教徒の女性が着用するニカーブとブルカ、主に抗議者が使用するスキーマスクとバンダナ。
スイスの有権者は提案を賛成51.2%ー反対48.8%で支持した。
提案はレストラン、スポーツスタジアム、公共交通機関、その他のすべての公共施設で顔を覆うことを禁止するよう求めている。なお、セキュリティや健康上の理由で顔を覆わなければならない人は除外される見込み。コロナ感染予防のマスクも除外されると伝えられている。当局は2年以内に提案を法制化する予定。
スイスのティチーノ州とザンクトガレン州はこの提案と同様の州法を定めており、違反者は罰金を科される。また、フランスやオランダなどでもほぼ同じ内容の法律が定められている。
一方、スイス政府はこの提案に強く反対し、「覆いの禁止は観光に害を及ぼす可能性がある」と主張してきた。当局者は地元メディアの取材に対し、「提案を受け入れれば、ニカーブとブルカを身に着けているイスラム教徒の女性はスイス観光を避けるだろう」と述べた。
ルツェルン大学(ドイツ)の調査によると、スイス国内でブルカを着用している女性はほとんどおらず、ニカーブの着用者は30人ほどだという。
スイスのイスラム教徒の数は人口(860万人)の約4%ほどで、そのほとんどがトルコ、ボスニア、コソボ出身。
この提案は「過激主義をやめろ」などのスローガンを掲げている右翼政党、スイス国民党(SVP)が提案した。スイスの主要なイスラム教団体などは国民投票の結果に落胆している。
イスラム教徒の中央評議会は声明で、「この決定は古い傷を開き、法的な不平等の原則をさらに拡大し、少数派のイスラム教徒を排除するという明確なメッセージです」と提案を非難し、異議を唱えることになると述べた。
スイスの憲法は市民に強い発言権を与えており、国民投票で様々な問題を処理してきた。2009年12月の国民投票ではモスクの塔(ミナレット)の新設を禁止する提案が承認され、イスラム教団体が欧州人権裁判所に異議を申し立てている。なお、政府はこの提案にも強く反対していた。
SVPは提案の中でイスラム教には言及せず、「暴力的な抗議者に対処する措置」と主張している。しかし、ニカーブとブルカの着用禁止は提案に盛り込まれた。
国民投票に先立ち、SVPのウォルター・ウォブマン議員は声明で、「イスラム教徒のベールはヨーロッパでますます目立つようになっています」と述べた。
ウォルター・ウォブマン議員:
「しかし、スイスではこの極端なイスラム教の象徴(ニカーブとブルカ)は受け入れられません。私たちは相手の顔を見て話します。私たちの伝統は相手に顔を見せることです。それはスイスの自由のしるしです」
人権団体のアムネスティ・インターナショナルはこの提案に反対し、「表現と宗教の自由を含む女性の権利を侵害する危険な法律」と呼んだ。
公共の場で顔を覆うことを禁止する法律はヨーロッパで物議を醸してきた。
フランスは2011年にニカーブとブルカを含む覆いの着用を禁止し、オランダ、デンマーク、オーストリア、ブルガリアも部分的に禁止している。