◎スイスの憲法は国民に強い発言権を与えており、国民投票で様々な問題を処理してきた。
2021年6月26日/スイス、首都ベルンのナイトクラブ(Getty Images/AFP通信/EPA通信)

スイスの保健当局によると、コロナウイルスの1日あたりの新規陽性者はこの1カ月で5倍以上に増加し、隣国のドイツやオーストリアと同程度の上昇傾向を示しているという。

しかし、感染爆発にもかかわらず、スイス人は11月28日に政府のコロナ対策の是非を問う国民投票に投票する予定であり、反対派が勝利すれば、議会は「COVID-19法」を見直す予定である。

スイスの憲法は国民に強い発言権を与えており、国民投票で様々な問題を処理してきた。

今年6月の国民投票では、気候変動対策を強化する政府の法案の是非が問われ、有権者は自動車燃料税と航空券への課税計画を拒否した。

2009年12月の国民投票ではモスクの塔(ミナレット)の新設を禁止する提案が承認され、イスラム教団体が欧州人権裁判所に異議を申し立てた。政府はこの提案に強く反対していた。

国民投票で提案を審査するためには10万人分の署名が必要。スイスの人口は約855万人。

COVID-19法はコロナの影響を受けた個人、企業、そして最前線で働く医療当局者を支援する予算(約9,000億円)を確保し、多くの欧州諸国が採用しているグリーンパス(コロナヘルスパス)の提示を義務化した。

バー、カフェ、レストラン、映画館、美術館、スポーツイベント、大学の対面授業などに参加する際はパスポートが必要。ワクチン未接種者は陰性証明またはコロナから回復したと証明できる証明書の提示を求められる。

<スイスの国民投票 11月28日
1.看護師の教育と訓練に充てられる予算10億フラン(約1,200億円)の是非。

2.法律を改正し、裁判所の判事を選挙で決めるようにする。(提案)

3.COVID-19法の是非。

公共放送SRFの世論調査によると、回答者の約70%が最前線で働く看護師のために充てられた予算を承認すると回答したという。しかし、COVID-19法に関しては回答者の約60%が反対と答えた。

ワクチン反対派はここ数週間、各地で様々な集会を開催し、主要な団体は首都ベルンの集会にJFKの甥で反ワクチン活動家のロバート・F・ケネディ・ジュニア氏などの著名人を召喚した。

JFKの甥はマスクを紛失した聴衆に、「政府は厳格な大量監視システムを導入し、あなたのプライベートを監視するつもりです」と語り、喝采を浴びた。「いいですか...COVID-19パスポート監視システムを排除しなさい」

AP通信などによると、マスクを紛失した聴衆にはネオナチと思われる過激派も複数参加し、アラン・ベルセ保健相は「悪魔」と呼ばれたという。

英BBCニュースの取材に応じたある女性は、「私は若く健康な女性なので、ワクチンを拒否します」と語った。「COVID-19法はスイスを刑務所に変えました。私は好きなところに好きな時に行きたいです」

悪魔と呼ばれたベルセ保健相は26日、政府はまだコロナ対策を強化していないと述べ、国民に「察する」よう訴えた。政府はオーストリアやドイツのような事態は避けたいと考えているが、国民投票前に対策を強化するとパスポートの廃止を求める声が強くなる可能性があるため、対策を強化できずにいる。

政府は先日、全国の医療機関に体制を強化するよう呼びかけた。しかし、一部の専門家と医療当局者は政府の要請に反発した。

公共放送SRFによると、パンデミック以来、国内の看護師と介護福祉士の約10%が職場を離れたという。スイス看護師連盟のミシェル・ジルー会長は先日の声明で、「人員が足りない」と嘆いた。「医師と看護師は休憩なしで働き、その多くが残業や余分なシフトに対応しています。看護師の3分の1は不眠症や燃え尽き症候群を患っています...」

ジュネーブ大学のパスカル・シアリーニ教授はAP通信のインタビューの中で、「入院患者の増加傾向は新規陽性者に比べると緩やかだが、政府は次の手を用意しているだろう」と語った。「政府は来週、国民投票の結果を考慮し、次の対応を決めます...」

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