SHARE:

スイス、人口1000万人上限案の是非を問う国民投票実施へ

当該提案は反移民色の強い政党・スイス国民党(SVP)が主導するもので、支持者が必要な署名を集めたことで国民投票の発議要件を満たした。
スイス、首都ベルンの通り(Getty Images/AFP通信)

スイスは2026年6月14日に、人口を1000万人に制限するかどうかを問う国民投票を実施する。当該提案は反移民色の強い政党・スイス国民党(SVP)が主導するもので、支持者が必要な署名を集めたことで国民投票の発議要件を満たした。政府が12日、投票日を発表した。

統計局によると、2025年第3四半期時点で同国の人口は約910万人、近年は出生による増加よりも主にEU加盟国を中心とする外国出身者の流入が人口増の主因となっている。外国生まれの住民は総人口の約30%を占める。提案が成立すれば、2050年までにスイスの恒久的居住者の総人口が1000万人を超えないことを法律で定めることになる。

提案の内容は、もし人口が950万人に近づいた場合、政府に対し移民抑制策の実施を義務付けるというものだ。具体的には、難民受け入れや家族再統合の制限、在留資格付与の厳格化、国際協定の再交渉などが想定されている。支持者側は人口抑制策が環境や天然資源、社会インフラ、福祉制度への負担を軽減すると主張している。

スイスの直接民主制の下では、有権者が国政に直接意見を反映させる制度があり、このような国民投票が年数回行われる。SVPは長年、移民増加を抑制する政策を掲げてきたが、これまでの試みは賛否が分かれ、全国的な支持を得ることには成功していない。

今回の提案に対しては広範な批判も出ている。政府や議会内の多くの政治勢力、経済界、有識者らは、人口抑制を単純な答えとするのは問題を矮小化するとの見解を示している。批判者はスイス経済が外国人労働者に大きく依存している点を指摘し、医療、ホテル、建設、教育など多くの分野で外国人の労働力が必要不可欠であると訴える。また、スイスが欧州のシェンゲン圏に加盟し、自由な人の移動を認めている国々との協定を有していることから、厳格な制限は既存の国際的義務を損なう可能性があるとの懸念もある。

さらに、スイスはEUに加盟していないものの、隣接するオーストリア、フランス、ドイツ、イタリアとの経済的・社会的な結びつきが強く、自由移動協定は同国の労働市場にとっても重要な役割を果たしている。批判者は、人口制限策がこれらの関係を損ないかねないと警告している。

政府と議会は今回の提案に反対しており、経済界も労働力不足や雇用機会の低下などのリスクを挙げている。一方で、移民急増や住宅不足、公共サービスの逼迫に対する不満を背景に、国民の間では人口上限を支持する意見も根強い。世論調査では支持・反対の割合が拮抗しているという結果も報じられ、今後の議論が注目される。

スイスの人口は1960年代以降急増し、豊かな生活水準と高賃金が移民流入を促してきた。提案が成立すれば、国内外におけるスイスの政策と経済の行方に大きな影響を及ぼす可能性がある。今回の国民投票は移民政策と国家の将来像を巡るスイス社会の分岐点となる見通しだ。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします