◎ドーバー海峡の最狭部は約34km。潮流は強く水温も低いため、ボートで渡るのは極めて危険。
2021年11月17日/フランス、カレー近くの海岸(Louis Witter/AP通信)

フランスとイギリスの現地メディアによると、移民希望者を乗せたボートがドーバー海峡で転覆し、これまでに31人の死亡を確認したという。

フランスのジェラルド・ダルマニン内相は24日、ボートには34人が乗船していたと考えられていると記者団に語った。現地メディアによると、仏当局は女性5人と子供1人を含む31人の遺体を回収し、2人を救助したという。1人は行方不明で、34人の国籍は明らかにされていない。

アフガニスタン、シリア、イラク、スーダン、エりトリアなどの紛争(内戦)に関連する移民希望者は増加の一途をたどっており、今年フランス北部の海岸に集まった人々は前年の約3倍に増加し、24日だけで106人が海上で保護された。

ドーバー海峡の最狭部は約34km。潮流は強く水温も低いため、ボートで渡るのは極めて危険。

現地メディアによると、英仏の合同チームは24日遅くに捜索を一時中断したという。両国は移民希望者の売買で利益を上げる人身売買組織とお互いの対応不足を非難した。

港湾都市カレーの地元メディアによると、当局は人身売買に関与したとされる容疑者4人を拘束したという。

カレーとダンケルクの港などを管理するオードフランス地域のフランク・ダーシン運輸担当は英BBCニュースのインタビューの中で、「法執行機関は厳しい戦いを強いられている」と述べ、現場で取り締まりにあたる警察や関係者を擁護した。「警察は毎日何百隻もボートを取り締まっています。しかし、全てを止めることは不可能です。北部の海岸長は100km以上あります」

ダーシン運輸担当は「ドーバー海峡のボート横断は自殺行為」と述べ、亡命を希望する人々に踏みとどまるよう強く呼びかけた。「彼らは出航を阻止されても、次の日や別の機会に再チャレンジします。やめてください...」

一方、権利団体や活動家は欧州諸国の移民政策を厳しく非難した。フランスの慈善団体ユートピア56は、「移民希望者はボートに乗らざるを得ない」と述べ、EUに希望者の受け入れを加速するよう促した。

ボリス・ジョンソン英首相とエマニュエル・マクロン仏大統領は犠牲者に哀悼の意を表したうえで、事件の背後にいる人身売買組織を取り締まることが重要と述べた。

ジョンソン首相は声明で、「フランスの隣国ベルギーやオランダだけでなく、欧州全体で問題の解決に向けて緊密に連携する必要がある」と強調した。

マクロン大統領はイギリスと「責任を共有する」と強調し、「イギリスはフランス国内で発生した事故の調査に完全に協力する」と述べた。

しかし、ジョンソン首相は24日に招集した緊急会議の中で、「フランス当局の海岸線沿いにおけるパトロールは十分ではなかった」と述べ、フランスを批判した。

これに対しフランスのダルマニン内相は、「当局は今年1月以来、海峡で約7,800人を救助し、24日だけで海峡を渡ろうとする移民希望者671人を止めた」と反論した。

公共放送フランス24などによると、今年ドーバー海峡を渡ろうとした移民希望者は11月時点で前年の約3倍、25,700人を超えたという。

人身売買組織は中東やアフリカの希望者をトラックなどで移送し、フランス北部の海岸でボートに乗せる。現地メディアによると、EUへの亡命に失敗した一部の移民希望者は、比較的規制の緩いイギリスを目指すことが多いという。

国連難民高等弁務官事務所によると、今年、北アフリカやトルコから欧州を目指した移民希望者推定1,600人が地中海で死亡または行方不明になったという。

スペイン領カナリア諸島へのルートでも、今年だけで数百人が死亡している。

国際人権NGOアムネスティ・インターナショナルUKで難民および移民問題を担当するトム・デイビス氏はAP通信に、「私たちは今回のような事故を防ぐ努力と、移民希望者を保護する新たな対策を強く望んでいます」と語った。「彼らを保護することが重要です。庇護を求める人々を追い返さないでください...」

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