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スペイン、50万人の不法移民に合法的な地位付与へ、狙いは?

この措置は多くの欧州諸国や米国が移民規制を強化する流れと対照的な動きであり、最大で50万人以上の不法滞在者に恩恵をもたらす可能性がある。
2026年1月29日/スペイン、バルセロナの在パキスタン領事館入口(AP通信)

スペイン政府は先週、滞在資格を持たずに国内で暮らす移民に対して合法的な滞在と就労の道を開く大規模な移民政策を発表した。この措置は多くの欧州諸国や米国が移民規制を強化する流れと対照的な動きであり、最大で50万人以上の不法滞在者に恩恵をもたらす可能性がある。

新政策は2025年12月31日以前にスペインに到着し、少なくとも5カ月間居住していることを証明でき、犯罪歴のない外国人が対象となる。対象者はスペイン全土での就労が可能な最長1年の滞在許可証と労働許可を申請できる資格を得る。申請期間は4月から6月末までの予定で、政府は申請処理を円滑に進めるための体制整備を進めている。

対象となる移民の多くはラテンアメリカやアフリカ出身で、農業、観光、サービス業といったスペイン経済の基盤を支える分野で働いているとみられる。これらの職種はしばしば低賃金で、合法的なステータスを持たないために搾取や不安定な労働条件にさらされることが多い。合法化により、社会保障や医療アクセス、住居契約の権利など、多くの基本的な権利が得られると期待されている。

3人の移民の体験談からは、今回の改革が生活に与える影響の大きさがうかがえる。アルゼンチンでの暴力を逃れたコロンビア出身の亡命希望者は、合法的なステータスが得られることで将来への希望を見出したと語る。また、チリ出身の元建築家は、不法滞在中に清掃の仕事を転々としながら貧困と詐欺に苦しんだ経験を述べ、安定した生活基盤を築ける可能性に安堵の表情を示した。パキスタン出身の男性は、合法化の機会を家族との再会や定職獲得につなげたいとの意向を示している。

今回の決定は与党・社会労働党(PSOE)を中心とする連立政権の合意に基づき、国会での議論が行き詰まっている移民法改正案を回避する形で政令によって実施される。サンチェス(Pedro Sánchez)首相は急速に進む高齢化と労働力不足に対応し、経済成長を維持するためにも移民の合法化が必要だと説明してきた。過去には1986年から2005年までの間に6回にわたって不法滞在者の合法化が行われ、労働市場への正規参入や税収増への寄与といった経済的恩恵が指摘されている。

一方で、保守系や極右政党からは、今回の措置が不法入国を助長し、公的サービスへの負担を増やすとの批判が出ている。国内では移民政策を巡る対立が今後の政治課題として浮上する可能性もあるが、支持者側は今回の措置を人権と社会的正義に基づいた必要な改革と位置付けている。

サンチェス政権はこの政策を「人権を基盤とした移民モデル」と表現し、移民統合の促進と社会的結束の強化につなげたいとしている。今回の改革がスペイン社会および経済にどのような影響を与えるかは、今後の制度運用と社会の受け止め方にかかっている。

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