セルビア各地で暴動再燃、反体制派と親政府派の衝突続く
セルビアでは北部ノビサド駅の事故以来、政府に抗議するデモが全国各地で行われている。
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セルビアの首都ベオグラードで14日、ブチッチ(Aleksandar Vucic)大統領に抗議するデモが再び暴動に発展し、機動隊と市民が衝突した。
AP通信によると、警察は少なくとも2つの都市で催涙ガスを使用。大勢を拘束した。
一連の暴動は12日から始まり、2日間で数十人が負傷した。
セルビアでは北部ノビサド駅の事故以来、政府に抗議するデモが全国各地で行われている。
この事故はノビサド駅の入り口で24年11月1日に発生。コンクリート製の天井が突然崩落し、6歳の少女を含む16人が死亡した。
ノビサド駅は1964年に建設され、近年2度改修工事が行われたものの、崩落した天井は工事に含まれていなかった。直近の工事は中国の国営企業が請け負っていた。
ロイター通信は数十の都市で暴動が確認されたと報じている。
ノビサドでは若者たちが「ブチッチを倒せ」「革命が始まる」などと叫びながら、与党・セルビア進歩党(SNS)の事務所を破壊した。
現地メディアによると、暴徒は市中心部にあるSNS事務所の窓を破壊。書類や家具などを持ち去った。数ヶ月間この事務所を守ってきた警察とブチッチ氏の支持者たちは暴徒の勢いに圧倒され、撤退を余儀なくされた。
ベオグラードの機動隊は催涙ガス弾を乱発し、平和的に抗議していたデモ参加者を追い払った。
親ロシア派のブチッチ氏は国営テレビのインタビューで、「外国組織が暴動を煽っている」と主張。暴徒を「テロリスト」「反逆者ども」と呼んだ。
ブチッチ氏は以前からこのデモに外国政府が関与していると主張してきたが、その証拠は示していない。
国家警察によると、12日と13日の暴動で警察官16人を含む数十人が負傷。14日の負傷者数は明らかになっていない。逮捕者も不明である。
EUの執行機関である欧州委員会は14日、デモが暴動に発展したことに深刻な懸念を表明した。
学生ユニオンはX(旧ツイッター)に声明を投稿。「警察が非武装の市民を攻撃し、内戦を引き起こそうとしている」と主張した。
このデモは各地の学生ユニオンが主催。多くの学生が講義をボイコットし、政府に説明を求めるため、デモに参加している。
この結果、国内のほぼ全ての大学が閉鎖される事態となった。
ブチッチ氏は全国の大学に授業の再開と、デモに参加した大学関係者を解雇するよう要求している。
野党はブチッチ政権が犯罪組織と連携して対立勢力への暴力やメディア規制を推進していると主張。与党はこれを否定し、野党が国家転覆を企てていると主張している。
デモ隊は非暴力を誓い、参加者に平和的に抗議するよう呼びかけてきたが、6月末に一部が暴徒化し、100人以上が逮捕される事態となった。
デモ隊は汚職、怠慢、安全規制の無視が横行した結果、ノビサド駅の改修がおろそかになったと主張し、ブチッチ氏に責任を取るよう求めてきた。
政府与党は過去の抗議デモを鎮めることに成功してきたが、現在の学生運動は農業組合、教職員、看護士、弁護士、医師、裁判官、俳優など、あらゆる階層から広く支持を集めており、収まるどころか勢いを増しているように見える。
捜査当局は今月初め、この崩落事故に関連して元大臣を含む6人を逮捕したと明らかにした。
検察は6人が中国企業に請求書(工事費)を水増しして提出するよう求め、国に1.15億ドル(約169億円)の損害を与えた疑いがあると指摘している。
中国企業は請求書を水増しすることで1880万ドル(約27.7億円)の利益を得たとされるが、詳細は明らかになっていない。
検察は昨年末、この事故に関連してベシッチ(Goran Vesic)前建設相を含む13人を起訴した。13人は公共の安全に対する重大な犯罪行為と公共工事で不誠実な対応をした罪に問われている。有罪が確定すれば、12年以下の懲役刑に処される可能性がある。