セルビア暴動激化、警察が反体制派数百人逮捕、ケガ人多数

セルビアでは北部ノビサド駅の事故以来、政府に抗議するデモが全国各地で行われている。
2025年8月15日/セルビア、首都ベオグラード、暴徒に備える機動隊(AP通信)

セルビア全土で15日、ブチッチ(Aleksandar Vucic)大統領に抗議するデモが行われた。

警察は声明で、「15日の暴動を含む今週の争乱に関与したデモ参加者数百人を逮捕した」と明らかにした。

現地メディアによると、首都ベオグラードの抗議デモは3日連続で暴動に発展。機動隊の取り締まりにより数十人が負傷したという。

警察はベオグラードの一部地域に装甲車を展開し、反体制派と親ブチッチ派の衝突に備えた。

AP通信によると、親政府派は警察と連携して反体制派を殴ったり蹴ったりしたという。

セルビアでは北部ノビサド駅の事故以来、政府に抗議するデモが全国各地で行われている。

この事故はノビサド駅の入り口で24年11月1日に発生。コンクリート製の天井が突然崩落し、6歳の少女を含む16人が死亡した。

ノビサド駅は1964年に建設され、近年2度改修工事が行われたものの、崩落した天井は工事に含まれていなかった。直近の工事は中国の国営企業が請け負っていた。

ロイター通信は15日、数十の都市で暴動が発生し、数十人が病院に搬送されたと報じた。

ノビサドの暴動も激しく、大学生とみられる若者たちが「革命戦争が始まる」「ブチッチを倒せる」などと叫びながら親政府派に石を投げつけ、花火を撃ち込んだ。

ノビサドのデモ隊は14日、与党・セルビア進歩党(SNS)の事務所を破壊した。

ブチッチ氏は15日、国営テレビのインタビューで警察の取り締まりを称賛し、警察官に追加のボーナスを提供すると表明した。

またブチッチ氏は外国政府がデモ隊を煽り、政権転覆を企てているという主張を繰り返した。

ソーシャルメディアで共有された動画には警棒で市民を殴る警察官や、地面に押し倒した女性を踏みつける男の姿が映っていた。被害者の多くが若者と女性であった。

内務省は現地メディアが機動隊の暴力を非難する中、「警察官はシールドで身を守り、暴徒から攻撃を受けた場合のみ、反撃・逮捕している」と主張した。

それによると、過去3日間の暴動で75人の警察官が負傷したという。

デモに参加している野党の指導者や議員たちはブチッチ氏に引退を勧告し、警察を「ロシア兵」と呼んだ。

親ロシア派のブチッチ氏は暴徒を「テロリスト」「反逆者ども」と呼んでいる。

EUの執行機関である欧州委員会は14日、デモが暴動に発展したことに深刻な懸念を表明した。

学生ユニオンは14日の声明で、「警察が非武装の市民を攻撃し、内戦を引き起こそうとしている」と主張した。

このデモは各地の学生ユニオンが主催。多くの学生が講義をボイコットし、政府に説明を求めるため、デモに参加している。

この結果、国内のほぼ全ての大学が閉鎖される事態となった。

ブチッチ氏は全国の大学に授業の再開と、デモに参加した大学関係者を解雇するよう要求している。

野党はブチッチ政権が犯罪組織と連携して対立勢力への暴力やメディア規制を推進していると主張。与党はこれを否定し、野党が国家転覆を企てていると主張している。

デモ隊は非暴力を誓い、参加者に平和的に抗議するよう呼びかけてきたが、6月末に一部が暴徒化し、数百人が逮捕される事態となった。

デモ隊は汚職、怠慢、安全規制の無視が横行した結果、ノビサド駅の改修がおろそかになったと主張し、ブチッチ氏に責任を取るよう求めてきた。

政府与党は過去の抗議デモを鎮めることに成功してきたが、現在の学生運動は農業組合、教職員、看護士、弁護士、医師、裁判官、俳優など、あらゆる階層から広く支持を集めており、収まるどころか勢いを増しているように見える。

捜査当局は今月初め、この崩落事故に関連して元大臣を含む6人を逮捕したと明らかにした。

検察は6人が中国企業に請求書(工事費)を水増しして提出するよう求め、国に1.15億ドル(約168億円)の損害を与えた疑いがあると指摘している。

中国企業は請求書を水増しすることで1880万ドル(約27.6億円)の利益を得たとされるが、詳細は明らかになっていない。

検察は昨年末、この事故に関連してベシッチ(Goran Vesic)前建設相を含む13人を起訴した。13人は公共の安全に対する重大な犯罪行為と公共工事で不誠実な対応をした罪に問われている。有罪が確定すれば、12年以下の懲役刑に処される可能性がある。

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