◎議会は今年、リチウム鉱山開発プロジェクトを加速させるために、私有財産の収用手続きをより迅速に行える法律を施行した。
12月4日、セルビアの首都ベオグラードなどで政府のリチウム鉱山開発プロジェクトに反対する抗議デモが行われ、数千人が高速道路と橋を封鎖した。
ベオグラードの抗議者たちは徒歩で高速道路に侵入し、交通を完全に遮断した。現地メディアによると、ある団体は「政府を倒せ!」「蜂起!」などと叫びながら行進し、車に石を投げつけたという。
北部の都市ノービサードではフーリガンと思われる団体が道路を封鎖した抗議者に石やビンを投げつけ、乱闘に発展した。あるフーリガンはひどく殴打され病院に搬送されたと伝えられている。
保守的な政府の管理下に置かれている警察は無許可のデモにもかかわらず、取り締まりを行わなかった。
議会は今年、リチウム鉱山開発プロジェクトを加速させるために、私有財産の収用手続きをより迅速に行える法律を施行し、極右のアレクサンダル・ヴチッチ大統領もそれを強く支持した。
セルビアは深刻な水質汚染、大気汚染、産業廃棄物の不適切な処理に伴う公害に悩まれており、環境保護を蔑ろにする極右政党への非難は日増しに高まっている。ある環境専門家は、リチウム鉱山は農地を破壊し、水源をさらに汚染すると警告した。
リチウム鉱山に反対するデモは11月27日に本格化し、一部の抗議者と警察が衝突した。ある町ではこん棒とハンマーで武装した身元不明の仮面の男たちが警察官を襲撃する事件も発生した。
一方、極右のヴチッチ大統領は4日、抗議デモを無視したうえで、「リチウム鉱山開発プロジェクトを主導する企業が現地入りした」と明らかにした。
ヴチッチ大統領は保守系メディアPink TVの取材に対し、「企業は地権者との協議を望んでいる」と語った。「私たちは暴徒の圧力に屈することなく、民主的に地権者と協議を進めるでしょう。警察は4日の抗議を無視します」
またネボイシャ・ステファノビッチ国防相も抗議デモを強く非難し、「西側諸国の資金提供を受ける暴徒はセルビアの不安定化を企てている」と主張した。「暴徒はベオグラードや他の都市の橋、高速道路、他の主要道路を封鎖し、国民の生活に深刻な影響を与えました。暴徒はセルビア人の権利を侵害しています。彼らに関わってはいけません...」
これに対し、一部の抗議者は警察から脅迫されたと告発した。南部の都市ニシェで活動するダニエラ・ヴジョビッチ氏は地元メディアの取材に対し、「警察官が自宅に押しかけてきた」と語った。「警察官は環境活動集会に参加すれば逮捕もしくは罰金を科すと脅しました。極右警察はリチウム鉱山プロジェクトに反対する活動家や抗議者を監視し、邪魔をすればただでは済まないと脅迫しています」
ヴジョビッチ氏は、「抗議デモは犯罪ではなく市民に与えられた権利のひとつ」と繰り返した。「ヴチッチは今すぐ法律を廃止しなさい。私たちは独裁者とつながりのある特定の事業者だけが収益を上げる環境破壊事業を決して許しません...」
警察は4日の声明でデモは違法と警告を繰り返したが、大規模な取り締まりは行わなかったと伝えられている。警察はデモに関する情報を登録できる専用のウェブサイトを開設し、市民に違法行為を見た際は報告するよう呼びかけた。
セルビアはEU加盟を申請しているが、隣国コソボとの関係が足かせになり、加盟に向けた手続きは遅れている。NATO(北大西洋条約機構)は両国の国境付近のパトロールを継続している。
セルビアの州のひとつだったコソボは1998年2月に勃発したコソボ紛争でセルビアと衝突し、2008年2月に独立を勝ち取った。ほとんどの西側諸国はコソボの独立を認めているが、セルビアおよびその同盟国であるロシアと中国は認めていない。