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制裁対象の石油タンカー座礁、ブルガリア沖、ロシアの「影の船団」

当局はこのタンカーが水上ドローンによる攻撃を受けた後、漂流したとみている。
2025年12月6日/ブルガリア沖の黒海、座礁した石油タンカー(AP通信)

EUなどの制裁対象となっていた石油タンカー「カイロス(Kairos)」がブルガリア沖の黒海沿岸沖で座礁し、乗組員の救出作業が始まった。地元当局が6日、明らかにした。

当局はこのタンカーが水上ドローンによる攻撃を受けた後、漂流したとみている。カイロスはロシアの「影の船団(shadow fleet)」に属するとされる。

カイロスはガンビア船籍、全長274メートル、排水量約14万9000トンの大型タンカーで、パナマ、ギリシャ、リベリアの船籍を経てきた。

2025年7月にEUが制裁リストに登録、イギリスやスイスも追随していた。カイロスはエジプトからロシアの黒海南部の港へ向かう途中で、荷は積んでいなかった。11月下旬、トルコ沿岸の黒海でウクライナの水上ドローン攻撃を受け、火災を起こしたとされる。

その後、トルコのタグボートに曳航されブルガリア領海へ移動したが、曳航任務は途中で放棄されたらしく、タグボートは撤収。カイロスは動力を失い、海上を“幽霊船”のように漂流した末、座礁したようだ。

ブルガリア当局は6日、乗組員10人(国籍さまざま)は全員無事であると発表。荒天となっているため即時の移乗は見送られたが、水・食料は少なくとも3日分あり、安全性にも問題ないとのこと。荒天が収まり次第、曳航して安全な場所へ移す予定とした。

また、国境警備当局は岸のサーマルカメラやレーダー、無線で常時監視を続けており、船は投錨し、現在は安定した状態にあるという。乗組員は避難を希望しており、当局は安全な方法で移動させる考えを示した。

一方、なぜこのような経緯でタンカーがブルガリア領海に曳き込まれ、見捨てられるに至ったのか。関係当局は外交ルートを通じて説明を求めるとしており、トルコ側の関与の有無や手続きの適法性も含めて調査を進めている。

今回の一連の事態はウクライナによる海上戦略がロシアの制裁回避船団を狙った新たな展開を示すものとみられており、国際海運・制裁回避の動向に影響を与える可能性がある。また、曳航の放棄、放置、座礁という事態は海上安全と環境リスクの観点からも注目されており、関係各国による対応のあり方が問われる。

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