SHARE:

ロシア戦時税制、中小企業に深刻な影響、倒産・閉店相次ぐ

クレムリン(大統領府)は戦費と減少する石油収入を補うため付加価値税(VAT)の税率を引き上げ、納税義務の対象となる売上規模の基準を大幅に引き下げた。
2026年2月18日/ロシア、首都モスクワ郊外(AP通信)

ロシアではウクライナ戦争が4年目に入る中、首都モスクワのパン屋から地方都市の美容サロンまで、小規模・中規模企業が新たな戦時税制の影響で深刻な打撃を受けている。クレムリン(大統領府)は戦費と減少する石油収入を補うため付加価値税(VAT)の税率を引き上げ、納税義務の対象となる売上規模の基準を大幅に引き下げた。この税制改革は企業側の収益を圧迫し、多くの事業者が経営継続に疑問符を付ける状況となっている。

モスクワ近郊で「マシェンカ」という名のパン屋を経営するデニス・マクシモフ(Denis Maximov)さんは昨年末にテレビ番組でプーチン(Vladimir Putin)大統領に直接税制見直しを訴えた。マクシモフさんが税負担が何倍にも膨れ上がることへの懸念を示し、「国の状況は理解するが先行きに楽観できない。多くが閉店に追い込まれるだろう」と述べた。しかし政府の対応は限定的で、改革は撤回されなかった。

今回の税制では年収が6000万ルーブル以上の事業者に課されていたVATが、今年は2000万ルーブル、さらに2028年には1000万ルーブルに引き下げられる。他にも定額税制の適用対象も縮小され、より多くの企業が一般税率の対象となる見通しだ。

この税制変更は消費者需要の低迷とも重なり、小売りやサービス業への影響が目立つ。サンクトペテルブルクで美容サロンを経営するダリヤ・デムチェンコ(Daria Demchenko)さんは4店舗のうち2店舗を閉鎖または売却せざるを得なかったと語る。家賃や仕入れコスト、警備・銀行手数料などが30%以上上昇し、SNS広告の規制強化で集客手段も制限される中で経営が苦境に立たされているという。

業界団体「美容産業企業協会」のリャリャ・サディコワ(Lyalya Sadykova)会長は、サンクトペテルブルクで既に約10%の店舗が閉鎖され、さらに同数が売却されたと述べ、税支払いの第1回期限が迫る4月以降、倒産や市場からの撤退が相次ぐと予想する。

パン屋の例では、店側がマシェンカ名義でクレムリンに焼き菓子を送ったことが話題となり、一時的に売り上げが伸びたものの、税制が変わらない以上経営上の不安は根強い。政府はVAT免除など税負担軽減策を検討していると報じられたものの、実施時期や対象範囲は不透明だ。

専門家は中小企業がロシア経済の約20%を占める重要なセクターであるにもかかわらず、戦時下の税制がその成長と革新能力を損なう可能性を指摘する。石油収入の減少に対応して税収確保を図る政府の意図は理解できるとしても、長期的には経済全体の活力をそぐ恐れがあるという分析もある。

こうした税・経済環境の悪化は内需の停滞や物価上昇と相まって小規模事業者の経営判断に大きな影響を与えており、戦後の経済回復を見据えた基盤形成にも影を落としている。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします