◎プーチン大統領は戦争を宣言しなかったが、ウクライナ軍と西側諸国の動き次第では考えを改める可能性がある。
ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は9日、対独戦勝記念軍事パレードで、ウクライナにおけるロシア軍の作戦は西側諸国の政策に対応するものと語った。
プーチン大統領は第二次世界大戦で戦死したソ連兵に哀悼の意を表し、赤軍の対ナチス戦とウクライナ侵攻は類似していると主張した。
プーチン大統領は「ウクライナでの軍事作戦は、潜在的な侵略を回避するために必要である」と主張した。
さらに、ロシア軍はウクライナで「ロシアの安全を守るために戦っている」とし、戦闘で倒れたロシア兵士に1分間の黙とうを捧げた。
赤の広場で行われたパレードには戦車、装甲兵員輸送車、巨大な大陸間弾道ミサイル(ICBM)などが登場した。参加者はナチスに勝利した赤軍を称え、その戦闘で死亡したとされる推定2700万人の兵士に哀悼の意を表した。
しかし、今回のパレードは例年のそれとは全く異なる格別の重みを持っていた。
ウクライナに送り込まれた新兵を含む多くのロシア兵は、西側諸国がウクライナに供与したミサイルや砲撃に直面し、この2カ月で少なくとも数千人が死亡したと推定されている。
モスクワ以外の都市でもパレードが開催され、親ロシアの象徴である「Z」や旧ソ連の国旗が掲げられた。
一部の民主的なロシア人と反体制派は、プーチン大統領がウクライナで進行中の「特別軍事作戦」を「戦争」にアップグレードし、戒厳令を発動すると懸念している。
プーチン大統領は演説の中で戦争状態にあるとは述べなかったが、ウクライナ軍と西側諸国の動き次第では考えを改める可能性がある。
戒厳令を発動すれば、国境は閉鎖され、予備兵の徴用が始まり、国内のあらゆる物資が戦争に向けられ、ロシアの経済はさらに疲弊し、西側諸国との全面戦争に突入する可能性すらある。
しかし、ペスコフ(Dmitry Peskov)報道官は9日、AP通信の取材に対し、「5月9日は神聖な日、最も重要な日であり、影を落とすものは何もない」と述べた。
テレグラムなどのSNSには「プーチン大統領は戦争状態にあると宣言する」「徴用が始まる」という噂が多数投稿されている。
AP通信はロシア国内で活動する人権団体のコメントを引用し、「ロシア国内では兵役を命じられた場合の対応や、兵役を拒否する方法を知りたいという電話が急増している」と報じた。
一方、ロシア国営メディアは愛国的なプロパガンダの発信を強化している。
プーチン大統領は2月24日の開戦時、「ネオナチの脅威を取り除くために、ウクライナの非軍事化を目指す」と宣言し、メディアはゼレンスキー大統領をネオナチのリーダーと呼んだ。
最近のテレビ解説では、「プーチン大統領の言葉は抽象的なものでもスローガンでもない」と説明し、ロシアは特別軍事作戦で素晴らしい戦果を上げていると称賛した。
ウクライナ軍は北東部ハルキウ州でロシア軍を押し返し、占領された領土を取り返しつつあるとされる。米政策研究機関の戦争研究所は、「ウクライナ軍は北東部の国境付近までロシア軍を押し返す可能性がある」と予想している。
AP通信の取材に応じた反体制派によると、「当局は現在ウクライナで戦っている兵士の写真をパレードで掲げるよう家族や親族に提案した」という。
対独戦勝パレードは第二次世界大戦に参加したソ連兵の写真・肖像画を掲げ、2700万人という途方もない犠牲者を出した、いわゆる「不滅の連隊」に敬意を表するものである。