◎ロシアはウクライナ軍の東部部隊に西側の新たな兵器やその他の支援物資が届くことを恐れている。
ロシア軍は25日、東部ドンバスの戦線から遠く離れた鉄道や燃料施設を攻撃した。
ウクライナ鉄道によると、中部と西部の5つの鉄道駅がミサイル攻撃を受け、職員1人が死亡した。ポーランド国境に近い西部リビウ付近も25日にミサイル攻撃を受けたとされる。
ウクライナ政府は25日、中部ビンニツァの鉄道施設が攻撃を受け、少なくとも5人が死亡、18人が負傷したと明らかにした。
AFP通信によると、駅への攻撃により、少なくとも16本の旅客列車が遅延する見通しだという。
ロシア国防省の報道官は、ウクライナ中部の製油所と燃料貯蔵所を破壊したと主張した。また報道官によると、ロシア軍機は一晩で56の標的を攻撃したという。
NATO欧州連合軍の元最高司令官であるフィリップ・ブリードラブ氏はAP通信のインタビューの中で、「燃料貯蔵所や鉄道への攻撃は、ウクライナの戦争資源を枯渇させる戦略の一部である」と指摘した。
ブリードラブ氏は鉄道への攻撃について、「前線への物資輸送を妨害するためにやっているのだと思う」と説明した。「ロシアは市民が旅客列車で戦線から離れようとしていることを知っています。この攻撃は輸送の妨害だけでなく、列車には危なくて乗れないと市民に思わせる効果も期待できます」
一方、米国はウクライナにより多くの兵器と支援を提供し、2カ月を超えた戦争に変化をもたらしたいと考えている。
ブリンケン国務長官は24日の会見で、「ロシアは失敗、ウクライナは成功している」と指摘した。
ブリンケン氏によると、バイデン大統領は1億6500万ドル相当の弾薬と、追加物資を購入する3億ドルの融資を提供する予定だという。これは先週発表された8億ドル相当の追加軍事支援とは別ものである。
オースティン国防長官はさらに一歩踏み込み、「ロシアがウクライナに侵攻できなくなるまで弱体化することを望む」と発言した。
オースティン氏のロシア弱体化発言は、米国がより大きな戦略的勝利を目指していると示唆している。米国は開戦当初、「ウクライナの勝利と、ロシアの脅威からNATO加盟国を守る」という立場を示していた。
プーチン大統領は米国とその同盟国が「ロシア社会を分裂させ、内部から破壊しようとしている」 と非難している。
ロシア軍は東部と南部の主要拠点の制圧に向け進軍中と伝えられている。
AP通信などによると、ロシア西部のウクライナ国境から遠くない場所にある2つの石油施設で火災が報告された。ウクライナ軍は声明を出していない。
ロシアはウクライナ軍の東部部隊に西側の新たな兵器やその他の支援物資が届くことを恐れているように見える。
スコットランドのセント・アンドリュース大学の戦略研究教授であるオブライエン氏はAP通信の取材に対し、「戦闘は小康状態に入ったように見える」と指摘した。「両陣営は被害を減らしつつ相手を弱体化させる攻撃を繰り返しているようです。ミサイルは費用がかかりますが、遠くから撃ち込めば自軍に被害は出ません」
ウクライナ南部と国境を接する分離主義国家の「沿ドニエストル」でもロケット弾とみられる攻撃が報告されている。主要メディアによると、犯行声明は今のところ出ていない。
モルドバ外務省は事件について、「分離組織はウクライナ軍の攻撃を受けたと主張し、ロシア軍の支持に回る可能性がある」との見方を示した。
米国も先週、ロシアはモルドバに侵攻する口実を作るための偽旗作戦を実施する可能性があると警告していた。
沿ドニエストルは1990年代初頭の「トランスニストリア戦争」でモルドバから独立したと主張しているが、モルドバ政府と国際社会はこれを認めていない。ロシア軍は分離主義勢力のテロ作戦を支援し、この地域に兵士1500人を駐留させている。
南東部マリウポリでも一進一退の攻防が続いているとみられる。アゾフスタル製鉄所には約1000人の民間人が避難しているとされる。
ロシア軍は25日、製鉄所に人道回廊を開き、民間人を避難させると突然発表した。
しかし、ウクライナはこの申し出に懐疑的な見方を示している。ベレシチューク副首相はテレグラムに、「我々はこの人道回廊を安全とは考えていない」と投稿した。
またベレシチューク副首相はロシアは以前にも同様の提案をし、約束を破ったと指摘。国連に避難を監督するよう要請した。
一部の専門家も「製鉄所の防御を解けばハチの巣にされる可能性がある」と警告している。
マリウポリ市議会は同日、市中心部から北に約10kmの地点で新たな集団墓地を確認したと明らかにした。ロシア軍はこの地域に少なくとも2つ集団墓地を造ったとされる。
